環境会議

「この地球環境に大変な問題である温暖化をどうするか皆さんで考えましょう」
えらい人が集まって、むずかしい顔をして話し合っていました。
「このままでは地球があぶない。数十年後には温度が数度あがるだろう」
「そうならないために、いまこそちからをあわせよう」
えらい人たちはうなづきあって、地球がぽかぽかしてしまわないようにがんばろうといいました。

 なんどもえらい人があつまって、
「たいへんだ、地球はぽかぽかしてきたぞ。あぶないぞ。」と言うので、
足元でなんとなく聞いていた地球もおどろいてしまいました。
そしてとうとう、人間に聞いてみることにしたのです。

「ぼく、このままだとあぶないの?」
地球の声をきくのはこの数千年で初めてのことだったので、人間はびっくりしました。
「あぶないとも。でも、心配しなくてもいい。必ず君の事を助けるからね」
「いま、みんなが地球を守る事を考えているんだよ」
「このまま暑くなると地球は危ないから、暑くならないようにするんだよ」
地球は嬉しくて、きゅんと真ん中に縮まる思いでした。
乗っかってる小さな生き物たちが、地球の事を考えてくれるのは初めてだったからです。
「ぼくはおおきいから、樹も動物もぼくに気づいていないんだと思ってた。人間はすごいなあ。」

 地球もできるかぎりのことをすることにしました。
憧れていた太陽からもなるべく離れてみたり、マグマを減らしてみたり、ガスを少なくしたり、
人間がいうように「ぽかぽかしないため」の努力をしました。
だいぶ涼しくなったので、人間たちはたいそう喜びました。
そしてえらいひとは集まっても、地球の話をしなくなってしまいました。

「まだ、昔よりはぽかぽかしてるかな」
地球がまだまだ努力して、地上を冷やし続けていると、人間のえらい人があつまって、
「地球はもう寒すぎて住むことができない。他の惑星に移動しよう」
と相談をはじめました。
あんなに地球のことをかんがえていたはずなのに、みんなで他の惑星に行ってしまうのです。

「なんだ、僕のことを好きで一緒にいてくれたんじゃ、ないんだ」
はじめて知ってもらえたのに。
はじめて好きになってもらえたとおもったのに。

地球はくるくる回っていたのもやめて、憧れの太陽へ向かって飛び込んでいくことに決めました。


end

(c)AchiFujimura StudioBerry 2007/09/28


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