さかなになりたい

気がついた!

「なに、これ!?あいつ、なんでこんなところで魚飼ってるの?
…飼ってるんだよねえ、まさか迷い込んだりしないだろうし、、、」
彼女は不思議そうな顔をして、トイレのおれを覗き込んだ。
「まぁ、いいわ。かわいそうだから、私の家にきなよ。
あとで彼には言っておけばいいわね。」

彼女は、台所からあなあきおたまをもってきて、おれをすくいあげた。
おい、!それ、おれんちのおたまだぜ?ふつうトイレに突っ込むか!?

そして、みずでおれをちょっとあらうと、台所のタッパーに水を入れて
おれをそこにいれた。

「ちょっと待っててね。あいつ、たしかここにへそくり隠してるはず、、」
おい!盗むな!
「1万円でいいや、今回は」
いつももっていってるのか!?

そうして、なんだかおれは彼女の知らない部分をみてしまって嫌な気分に成りながらも、
彼女につれられて部屋へ行った。

「ちょうど、むかしつかってた水槽があるのよ」
彼女はおれのためにセットしてくれた。ちょっと感動した。
「なんか、お前、奇麗な魚だね。」
おれは大きさは5cmくらいだけど、姿はグッピーというか、ベタというか。
かなり奇麗なのだ。

ぴんぽーん。
「あ、きた」
だれ!チャイムが鳴って、彼女が走っていく。
「やぁ、きたよー」
おとこだ!おれはひとまわり水槽の中を泳いだ。
なんだよー、こいつ!おまえ、おれというものがありながら!
必死に水槽をぐるぐるまわるおれ。

「あ、奇麗な魚だね。どうしたの」
「買ってきたのよ。奇麗でしょ〜?」
うそつけ!おい!
「高かったんじゃないの?・・・・あー、でもほんとに奇麗だね。
元気におよいでる・・・。」
「ほんとね・・・・奇麗」

なんかへんなふんいきだぞ!?
お、お?
おい、やめろ!彼女になにするんだ!
あー、もう、おい!そんなことすんな、おれの彼女なんだぞ!?
オマエもそんなうれしそうにするな!
なんだかムードもりあがりまくりだぞ!?

やめろってば!…あ!
ぐるぐる泳いでたおれは勢い余って水槽から飛び出してしまった。
一生懸命はねてもあいつは気がつかない。
すっかり良いムードでいちゃいちゃしてる。
そんな声を聞きながら……
おれは乾いていくのを感じていた。

end