タマゴ

キリちゃんは、突然タマゴが食べられなくなりました。
タマゴを見ていると、いままで何の疑いも無くこの物体を食べていたことが
とても信じられないのです。

吐き気がしたので、くちをおさえました。
台所でキリちゃんはうずくまりました。

なんでみんな、この中に何が入ってるかもわからないものを
平気でパカパカあけるんだろう。

もしかしたら、
ゼリー状の赤い血液がドロっとつまっているのかもしれないし。
成りそこないの部品が詰まってるのかもしれない。

この突然の恐怖はなんだろう。
いままで、最も幼いこの食品を食べてきた報いなんだろうか。
・・・・・・・・キリちゃんは立ち上がれませんでした。


急にあたりが真っ暗になりました。
キリちゃんはあわてて手を伸ばしました。
まるくて硬いものの中にいるようです。

タマゴです。タマゴの中です。
知らない世界に来てしまったのです。

「ここを、あけて!」
キリちゃんは中から外に向かって、助けを求めて叫びました。

誰もこのタマゴをあけるわけがありません。
だってここには、何が入ってるかもわからないような物を
平気でパカパカ開けるような人はいないのですから。

end