その小鳥が産まれた時、お母さんはハネタという名前をつけました。
空を自由な羽で飛びまわって欲しいという願いが込められていました。
でも、うまれてから7日後に、ハネタの羽は蛇に噛みちぎられてしまったのです。
兄弟もお母さんも、羽がなくなったハネタに前と変わらずにやさしくしてくれました。
特別扱いもしなくて、たまにはけんかもしたり、とても仲良く暮らしていたのです。
そんなすてきな季節はとても短かったのです。
自由に飛び回る兄弟たち。
巣立ちの時が来たのです。
「やぁ、みんな、元気で暮らせよ」
お兄さんがそう言うと、みんなは
「さよなら、さよなら」とさえずりながら遠くに飛んでいきました。
ハネタは巣にいました。
おかあさんと一緒に。
お母さんが持ってきてくれる餌をたべて、
お母さんの胸で眠りました。
でも、あるひ。
「ゴメンネ ハネタ」
「おかあさん」
「お母さんはね、もうあなたにご飯を持ってきてあげられないの」
(あなたの羽を、守ってあげられなくてゴメンネ。)
お母さんは、目を閉じました。さっきまでぶるぶる震えていたのに、
それも止まりました。
お母さん……。
ハネタは、残っている羽の根元をパタパタさせました。
ぼくね。羽なんかいらなかったよ。
羽がないから、おなかがすいた今でも、こうやって…
おかあさんのとなりで眠っていることができるのだもん。
end
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