「桜が終わるね。」
この国で一番、桜の密度が高いといわれている場所で僕・洋太はそうつぶやきました。
となりにいる、僕のおじさんも桜を見上げながら「そうだね。」とうなずきました。
「奇麗だね。桜は、樹に花を咲かせている時も奇麗だけど、落ちて積もっても奇麗だね。
桜って、すごく楽しそうに花を咲かせるから僕は好きだよ」
「でも、ここの桜は少し違うんだよ……。洋太くん、足元の花びらを少しかきわけてごらん。」
おじさんがそういいました。僕は、地面の花びらをそっとよせました。
「あ!ここの地面は、砂だ!奇麗なピンクの砂なんだ!」
「このあたりの花びらは、落ちると砂になるんだ。」
僕は、そのピンクを奇麗だと思ったけれど、一緒になんだか不思議な気持ちがするのを感じていました。
「なんだか、この砂は悲しい感じだよ」
僕がそう言うと、おじさんは桜を見上げました。
「ここの桜は、苦しがっている」
「彼らの言葉は花だ。彼らには花でしか訴えることができない。
自分たちが増えすぎてしまったことを知って、人間たちに僕たちを減らして欲しいと合図を送っているんだ。
……ただ、美しすぎたな。誰がここの桜を間引こうとするだろうか。」
地面に少しだけ差し込む光が砂に照り返して、僕は眩しくなって目を閉じました。
「ほら、洋太君…花びらを良く、見てごらん。」
「あ、花びらの形が……」
涙の形でした。
end
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