オルガンの本当の音は。
「オルガンの音って、僕、すきさ。」
少年はコンピュータで作られたオルガンの音をならしながら、
楽しそうにいいました。
老人は、「わしが聞いたことのあるオルガンの音色は、もっとすばらしいものだったがの・・・」
そう少年に言いました。
少年は、当然それが気になりました。
「この音より、素敵だったって言うの?そんなわけないよ。これより良いものがあるなんて
信じられないな。」
「わしが聞かせてやるよ。あの、すてきな音色をな」
老人はオルガンを探しました。
むかしの、あの音が出るオルガンを。
なかなか見つかりませんでした。
「ずっとむかしの、古いオルガンがある。」
そんな話を老人がきいた時には、もう体も弱りきっていました。
フラフラの状態で、そのオルガンのある古い学校の倉庫を目指しました。
少年の手を引いて。
オルガンがありました。部屋の隅っこで、ホコリをかぶって。
少年がオルガンにむかって歩き出しました。
老人はちから尽きて倒れました。もう動きませんでした。
少年はホコリも気にせずにオルガンのふたをあけました。
「♪・・・・・」
静かにオルガンの音が流れました。
「…なんだ、」
「この程度なら、コンピュータの方がよっぽどいい音出すよ」
少年は、オルガンのふたを開けたまま、倉庫を出て行きました。
end
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