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漫画での「食事」


「良い漫画は、食事のシーンをキチンと描いている」と言う意見はどこで読んだのかな?
忘れてしまっていますが、その意見を読んだときに、「なるほど!」と大変感心したのです。

言われてみれば、良い漫画は食事のシーンが楽しそうで、きっちり描かれている。
日常にあるひとコマとして食事をしていて、キャラクター達が楽しそうに食べているのを見れば、 そこに親近感がわくし、キャラたちの立場や仲間意識も感じ取れる。
自分が三度の食事を、誰とするのか・どんな気持でするのかを想像しやすいから、 食事の風景を見れば自然とわかってくるんじゃないでしょうか。

以下、私の印象に残っている「食事のシーンがある漫画」をいくつか挙げてみようと思います。


●ONE PIECE(尾田栄一郎)

 この「ワンピース」は、主人公のルフィが大食漢だから、しょっちゅう食事のシーンが出てくる。 コックのサンジさんの活躍シーンとしても描かれるので、冒険モノにしてはいい食べ物を食べている。
 私が一番印象に残っているのは、砂漠の国「アラバスタ」の難関を突破して、国に平和が戻った後の会食。(二十三巻)
ギリギリの国で精一杯のもてなし料理が用意され、王・王女も同席しての豪快な会食。 宮殿の中ではありえないほどの宴会騒ぎに、護衛の兵士も最初は怪訝な表情だったが、そのうちあまりの愉快さに 全員を巻き込んでの大騒ぎに。
 こんな楽しそうな食事シーンはなかなかない。さりげなさはないんだけど、とにかく楽しい。
惜しいのは、食事があんまり美味しそうじゃないところかな?(笑)


●まんが道(藤子不二雄A)

 食事シーンといったらはずせない作品でしょう!
「ンマーイ!」という叫びを聞けば、同じモノが食べたくなって仕方がないはず。
たいやき、ラーメン、カレー、フランスパンのコロッケはさみ、キャベツの味噌汁&炒め物……
どれもが庶民的な食べ物だけど、とにかく絵だけで美味しそう!


●男の華園-A10大学男子新体操部-(桑田乃梨子)

 よく思い浮かべてみれば、クワタンの漫画にはあまり食事シーンはないなぁ。
この「男の華園〜」は、宴会シーンが多い。あと、円先輩のバイト先が定食屋で、円先輩も料理が得意なので、 定食屋などで庶民的な食事をするシーンが多くなっています。
やっぱり、ワイワイと楽しく食事するシーンはいいなぁ。鍋をつつくシーンとか、クリスマスにケーキが大量にかぶる シーンとか(笑)


●のだめカンタービレ(二ノ宮知子)

 少女漫画には食事のシーンが比較的少ない気がするんだけど、「のだめ〜」は非常に多い。 音楽か、食べるか、その二つ!って感じです(おおげさか)。食べるシーンが出てくることで、 登場人物の親密さが増し、食事中の会話で物語が進んだり、笑えたりと、食事をフルに活用している漫画と いえるかもしれません。
 食事には人の性格が現れるものだし、キャラクター付けにも一役かっているかも。
ラーメン屋でも容赦なくクラブハウスサンドを注文するオレ様、千秋先輩……♪って感じで。


●ドラえもん(藤子・F・不二雄)

「ドラえもん」にも食事・食べ物関連のシーンは多く、しかもどれもが美味しそう。
モチ・どらやきは言うまでもなく、スネ夫が食べてる高級おやつや、のび太が食べるラーメンやケーキも美味しそう。
特にすごいのが、11巻の「おすそわけガム」の回。ガムを半分こして食べると、片方のガムを食べた人がほかのものを食べたときに、 その味がもう片方を食べた人にも伝わる……というもの。
例)スネ夫とのび太でガムを分けて食べて、スネ夫がメロンを食べると、のび太のくちにもメロンの味が広がる。

実際に食べているのはスネ夫なんだけど、一緒に味わっているのび太&ドラえもんの実況中継が実にうまそう。
「なめらかな、舌ざわり。さわやかな歯ごたえ。」シャクシャク
「すばらしいかおり。」シャクシャク
そのセリフだけで、メロンの香りと甘さが私にまで伝わってくる。高級メロン食いてえ。
最後のほうで出てくる、ママががんばって作ったケーキもすごいうまそうなんだ。

「近年のドラえもん映画には、食事シーンが少ない」という意見をどこかで読んだ。
言われてみるとそのような気がする。「海底鬼岩城」の食事シーンはよかった。
(読み返してみたら、別に昔のほうが食事をよくしているというわけでもなさそうだけれど)
今年のドラ映画「ワンニャン時空伝」には食事のシーンがあったけど、あんまり印象的じゃなかったなぁ。


●残酷な神が支配する(萩尾望都)

 義父からの性的虐待にあった少年の、自分の世界が壊れていく様の体感・壊されることへの理解を描いた重いテーマの作品。 この作品中にも、食事のシーンは非常にたくさん出てくる。
日常の営みとして、食事は重要な描かれ方をしており、同席したくない人間とも同席し、何気ない風を装って食事を するシーンは非常に心が痛いし、イアンとジェルミが精神的に遭難した後に、日常へ戻るきっかけとして 「いつもどおりの食事」シーンが描かれている。
この作品を見れば、何気ない食事シーンが如何に重要かがわかる。
オオゲサに感じるかもしれないけれど、個人的には「魂の 生への生還」と思えるんだよな〜。

16巻73ページの最後のコマの、「どうやらオレたちは 生還したようだ」というモノローグから、次の74ページへ。
74ページでは、チーズを切り分けるところから盛り付けられた朝食、ベーコンを切り分けくちへ運ぶ二人、コップで飲み物を 飲む二人、そしてロングでその食卓……と、丸々1ページを食事のシーンとしてセリフも無く描いている。
部屋に差し込む光の表現が、二人の心にもなにか日が差したようなすがすがしい印象を与える。コレはすごい。



 しかし、私は食事が苦手だ。早くカプセルとかで手早く済ませられる時代にならないかなーと思っているほどで、 食事には無頓着なのです。食べるのはかまわないけど、それまでの「何を食べるか」を考えるのも面倒だし、 食べ始めてもくちに運ぶのが面倒で。

 そんな私が描いている「メルプのまんが」という漫画には、結構食事シーンや食べ物ネタが出てくる。
意図的に、食事シーンを描こうとがんばっている結果なんだけど、メルプたちにはクチが無いので、食べさせるのが難しい。 それに、肉とかサカナを食べるシーンに罪悪感があって、そういう食材が書きにくいんだよねえ……
食事の苦手な人が食事のシーンを書くことに無理があるのかしら。

文・藤村阿智 (C)AchiFujimura 2004/05/16
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