スネ夫の顔は芸術的
スネ夫は自分の顔が好き、ということは結構知られています。
しかし、現実問題としてスネ夫は女の子に(金持ちと、おべっか以外で)キャーキャー言われているわけではありません。
それでは、スネ夫は一体なにをもって自分に自信を持ってしまったのでしょう。
客観的に見てみましょう。
動物に変身すればキツネになってしまう。(39巻:メルヘンランド入場券)
コロコロでも「スネかみコーナー」という企画が出来るほど、理不尽なその髪型。
クチと重なると、人形などの造形師さんが困ってしまうような不思議な輪郭をしています。
■いままでの造形物にて考察する
1)ドラえ本1 84P タカトク 昭和48年に作られたもの。ソフビ。
これはかなり苦心の跡が見られます。くちは妙に右端があがっていて、クチビルもある程度突き出している。
髪の毛は、3つの固まりに分かれて、ひさし状に広がっている。
2)ドラえ本1 103P エポック社 クレーンゲーム用の景品、フェルト製。
これは造形的には間違っているような気がしますが、見た感じの違和感はあまりない。
きっちり髪の毛をよこに流しちゃって、正面から見て3つに分かれているような感じ。
同じページ上部に書かれているほかの製品では、ジャイアン・しずちゃん・ドラミちゃんもいるのにスネ夫の姿はない。
3)ドラえ本2 65P エポック社 小さな指人形5体セット。ソフビ?
5体…ということで、もちろんスネ夫も、と思わせて実はドラミちゃん。
最初から5体ということでスネ夫よりドラミちゃんをとったのか、それとも単に作りづらかったのか…
4)ドラえ本2 68P バンダイ ドラえもん大集合 ソフビ?
ドラえもんと、各キャラがセットになったこのシリーズ。
これは真ん中に髪の毛が集まっている(前方にとがっている)タイプで、3つ切れ込みが入っている。
(つまり真横から見るとかなり本人に近い顔に見えるわけだ。)
133Pのクレーンゲーム景品もこれに似たタイプのもの。
5)ドラえ本2 69P バンダイ ガシャポン ドラえもんスタンプワールド
これは大胆に、斧のような形の髪型。でも結構ソレっぽい。切れ込みはあまりなし。
6)ドラえ本3 表紙
この作品は、ファンのあいだでも欲しい!と言われるほど「スネ夫がスネ夫らしい」仕上がりになっています。
へんな不自然さもあまりないし、キュートな出来上がりはナンバー1と言ってもいいでしょう。
ただ、この作品は非売品です。藤子F展というイベントで見ることができました。
7)ラナタウン タイニビッツドラえもん
ドラえもんの関節人形セットです。これも結構いい顔をしています。髪の毛はひさし型。
■まとめ:スネ夫は自分の顔になぜほれ込んでしまったのか
と言うことで、一つわかったことがあります。
スネ夫の顔は、立体向きじゃないと言うこと。
それがすなわち、なにを表すかということが重要なのです。
漫画に限らず、絵というものはある程度、立体を意識して描かれています。
ディフォルメはあるにしろ、大体の絵は丸みや質感などを表現しようとしています。
ところがスネ夫の顔は違います。とんがった髪の毛、そしてとんがったクチ。
それらはたとえ正面を向いていようが、横を向いていようが、俯瞰で見ようがあおりでみようが
ほとんど形が変わらないのです。
背中を見せない、ハードボイルドな男がいるように。
崩れた髪形はちょっとやそっとじゃ見せられない。
そんなスネ夫の決意が垣間見れるようです。
これはデッサンが狂っているとか、ディフォルメの枠を超えてすでにキュビズムなのです。
キュビズムと言うのは、
「二〇世紀初め、ピカソ・ブラックによってフランスに興った芸術運動。
対象を基本的な構成要素に分解し、それを再構成することによって、形態の新しい結合、理知的な空間形成をめざした。
抽象美術の母胎となり、造形の各分野に大きな影響を及ぼした。キュビスム。立体派。」(大辞林より)
と言うように、ピカソの「泣く女」などに代表される、絵画の技法のひとつなのです。
三次元に存在するものを、二次元で表現しようとしたとき・みたものをそのまま記号化して描くとスネ夫のような顔になりうるのです。
実際、最近のアニメや漫画の顔にはキュビズムな表現が増えてきました。
スネ夫はまさに、その先駆者であったのではないでしょうか。
そしてスネ夫は、そんな自分のキュビズムさに惚れこみ、うっとりと眺めていると言うことだと結論付けました。
なんせデザイナーを目指しているぐらいですからね。芸術的な物に造詣が深いんでしょう。
以上、勝手に考察してみました…
ちなみに…ドラえもんのクチビルもちょっとキュビズム入ってて、
立体のものをみるとクチビルに違和感があるよね。
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