ロスちゃんはほんとうは、とてもかなしかったの。 ロスちゃんには立派なつばさと、素敵な尾ひれがありました。 とりさんたちはいいました。 「ロスちゃんはいいなぁ。海も泳げるんでしょう?」 おさかなさんたちはいいました。 「ロスちゃんはいいなぁ。空が飛べるんだもの。」 ロスちゃんにはちっともよくありませんでした。 だって、空を飛ぶには尾ひれはじゃまで、海を泳ぐには翼がじゃまなんだもの。」 たとえつばさがなくても、 たとえ尾ひれがなくても、 海を速く自由におよげたり。 空をかっこよくとべたり。 それのほうがどんなに素敵でしょう。 でも、みんなはぜいたくだというの。 だから、きょうもロスちゃんは、なみだをみせるわけにはいかないのです。
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