恋したシンデレラ

ガラスの靴を落としたのは偶然でした。

きらびやかな姿でパーティーに現れたシンデレラは、実は某国のお姫様…でもなんでもないのです。
魔女の気まぐれで、願いをかなえてもらって変身した町娘だったのです。

そんな偶像のシンデレラに恋をしてしまった人がいました。
この国の王子です。
シンデレラも、一度手をとって踊っただけで王子に恋をしてしまいました。

王子はまず、あちこちの姫を探しました。
この人ではない。この人でもない。
必死に探しています。
そして数年の年月がたちました。

その数年の間に、シンデレラは少しやせました。
もちろん、あの証拠のガラスの靴はゆるくなっています。

もう少し早かったらぴったりだったのに、どうして今ごろ王子様が来ちゃったのかしら。
遠くの姫を全て探し終え、ついに地元の町娘の中から探し始めたのです。

王子とシンデレラにとって、最初で最後の激しい恋でした。
シンデレラは少し期待していました。

このガラスの靴は合わないけど、ああ、あなたは僕のシンデレラですね。
あなたを愛する僕だからこそ、わかるんです……

そう言って、王子はシンデレラの手をとります。そして二人で幸せに暮らすのです。

ついにシンデレラが王子の前に行きました。
王子様はあの日とかわらず、生き生きとしてガラスの靴を差し出します。
恐る恐る王子様の前へでたシンデレラは、足をガラスの靴に入れました。

王子様がガラスの靴より小さい私の足をみて、にっこり笑いました。
王子様は、やっぱり私をわかってくれたんだわ。
シンデレラも笑顔を見せました。

「王子、この娘も違いました。この町はこの娘で最後です」
いままで王子様だと思っていた人が、後ろを振り返ってそう言いました。
エ?
シンデレラが奥を見ると、そこにはやせこけて疲れた表情の青年が座っていました。
「そうだろうな、僕のシンデレラがこんな町にいるわけが無い」
聞こえるか聞こえないかの小さな声でつぶやくと、王子はさっさと帰ってしまいました。


一度脱げてしまったガラスの靴は、もう履くことはできないのね。
シンデレラも王子に背を向けると、自分の家へ戻っていきました。

end