変わらなくちゃいけないのかなぁ?
ぽかぽか陽気の春の日でした。
ウサギはぴょんぴょんと跳ねて、ネコの長老に会いに行くところです。
ネコの長老は静かで、何でも教えてくれるおじいさんです。
長いひげが、体の毛に混じって なんだか不思議な風貌です。
ウサギは長老の家のドアをそっとあけました。
「長老。お話してもいいですか。」
ネコの長老は振り向いて、ウサギを家の中へ招き入れました。
「おいで、おいで。今日は何が聞きたかったのかな。」
ウサギは、なにか困惑しているようすです。
「あのね、長老。ぼく、悩んでいるんだ」
「言ってごらん。さぁ、座って、このクローバーのお茶をのみながら」
「こないだね、久しぶりに タヌキさんにあったんだ。
そしたら、タヌキさんは前よりずっと意地悪になっていたよ」
「そうか、タヌキは意地悪になっていたのか。」
「それでね、キツネさんにもあったらね、
前よりなんだかおしゃれになっちゃって おしゃれの話ばっかりなんだ。」
「そうか、キツネはおしゃれになったのか。」
「それに、ネズミさんにあったら、ネズミさんは遠くの世界の戦争を心配していて
その話ばっかりなんだ。」
「そうか、ネズミは戦争の話をしたか。」
長老はクローバーのお茶をすすります。
「それで、ウサギはどう感じたんだい。」
「みんな、昔はあんなに仲がよかったのに。お互いが好きで、お互いのことと
そのときのことばかり考えていたのに、時間がたったら変わっちゃったんだ。
ぼくだけが、昔を懐かしいと思って、昔に帰りたがっているみたい。
ぼくも、変わらなくちゃいけないのかなぁ?」
「ぼくも、変わっちゃったのかなぁ?」
長老はお茶のおかわりをカップに注ぎました。
「ウサギは、なんもかわっていないよ。」
長老がそういうと、ウサギはクローバーのお茶にくちをつけました。
「あ、シロツメクサの葉を使っていますね。」
ぽかぽか陽気の春の日でした。
end
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