どくさい5

 それは、とても良い政治でした。
総理は子どもの頃、学校の先生にいじめられてつらい思いをしましたが、
うんと勉強をしたので立派な総理大臣になりました。
かしこく、決断が早く、小さな民衆の声にも耳を傾け、
国民とともに泣き 国民とともに笑ったのです。

国民は、みんな総理大臣のことが大好きでした。
みんなが応援してくれるので、総理大臣はもっとがんばります。
いま、この国は 歴史の中で一番輝いているのです。


 総理大臣は自分の夢をかなえることにしました。
幼い頃、自分が通っていた小学校を訪れたのです。
あっという間に総理の周りには子ども達が群がり、みんな笑顔で抱きついたりはしゃいだりしています。

 そこへ、よぼよぼの老人が近づいてきました。
「総理、覚えているかい。わしはこの学校で、君の担任をしていたんじゃよ。」
老人はくしゃくしゃに笑顔を見せて、総理に話し掛けます。
おじいさん、総理大臣の先生だったの?!すごいや! と子ども達も驚いています。

 総理大臣はにっこり笑って、老人に言いました。
「おじいさん、申し訳ないけど、ぼくはあなたのことを知らないなぁ。
 一体、あなたは誰ですか?」

 総理大臣の夢はかないました。

end

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