60億
ある日のことです。
世界にすごいニュースが響き渡りました。
日本の研究者グループが、核兵器を無効化する物質を作ったと言うのです。
世界中の核に怯える人々はとても喜び、完成・実用化を心待ちにしています。
「ただ、少しお金がかかるんです。」
研究者たちが記者会見でそういいます。
「いくらぐらいあれば研究は完成しますか。」
記者達の問いに、研究者の一人が答えます。
「60億円です。それだけあれば、世界中にこの魔法をかけることが出来る」
政府はお金を出しません。そこには政治的思惑がいろいろあるのです。
このニュースは全世界で放送されました。
それをみていた中学生の女の子が、次の日のホームルームで手を挙げます。
「社会の授業で習いました。今、世界には60億以上の人間がいるそうです。
皆で1円ずつ、たった1円ずつ寄付したら60億円が集まると思いませんか?」
日本の少女の提案があっという間に世界を盛り上げていきます。
世界人類が力をあわせて、核兵器と言う人類の敵をやっつける。
人々は日本円で1円になるお金を、少しずつ集め始めました…
ここで問題が起こります。
世界には1円も大金で、とても家族ぶん支払えない人々もいるのです。
少女は言いました、
「私、10人分…10円を払うわ。」
「俺、50人分なら払ってもいいぜ」
助け合う気持ちも、生まれ始めていたのです。
「私、60億人ぶん支払って差し上げましょう」
一人の富豪がそう言いました。
集まった6,318,839,137円は研究者達に手渡され、研究は完成しました。
世界人類は核兵器の恐怖から開放されましたが、
何かこの平和がつまらないと感じてしまうのです。
end
(c)AchiFujimura
集まった金額は、2002年7月20日午前0時ごろの世界の人口とのこと。
参考:
国立社会保障・人口問題研究所