光る花

今日も彼女はいじめられていました。
原因は、ただ、見た目があまりかわいくないということでした。
でも、みんなが言うほど彼女はぶさいくなわけではありません。

みんなは、顔のことを馬鹿にしたときの、彼女のかなしそうな顔を
見るのがたのしいと思っていたのです。

でも、彼女はすっかり傷ついて、
自分はとても人に見せられないんだと。
自分をみせたら人にきらわれると。
そう信じてしまったのです。

そして、彼女はいつも真っ黒な服を着て、真っ黒な布で顔をかくして、
部屋にこもりっきりになったのです。

彼女は、部屋の中でいつも花を育てていました。
いろんな花をいっしょに、そして、いろんな本を読みながら。
奇麗な奇麗な花を育てていました。

そして、彼女が部屋にこもりだしてから30年の月日が経ちました。
彼女がつくった新種の花が発表される日がきました。
でも、最初は誰も見向きもしませんでした。
だって、彼女のつくった花はあわいみどりの、あまり大きくない花だったんですもの。

開いてもつぼみのような形をしているし、
カワイイといって気に入る人はいても、爆発的な人気はなかったのです。

でも、そんな花が世界中の人気者になったのはそれからすぐでした。
その花が、夜になったら奇麗に光ることが分かったのです。
昼には真っ黒なホタルのように。
想像出来ないくらいの、多彩な色に輝くのです。
みんなはびっくりして、そのあとうっとりしました。

それはそれはきれいなのです。
だれもがうっとりするのです。
夜はそれを見てしまうので、夜中の犯罪が減りました。
そして、みんなはあたりまえのように、
昼間もこの花を見ていたいと思うようになりました。

でも、昼間はみんないろいろしなくてはなりません。
だから、夜にまたあの花を見るのを楽しみにして、仕事や学校を頑張りました。
みんな暗くなる前に家に帰って来るようになりました。

そのころ、彼女はあたらしい花を発表しました。
それは甘い花です。食べることが出来るのです。おいしくて、栄養満点なことが
医学的にもはっきりしました。

もう、みんなはこの花だけあったらいいとおもうようになりました。

国をあげて、日本を暗くする運動が始まりました。
食べることのできる花は、すでにほとんどの人の間で主流になっていました。
でも、この花は太陽の光にとてもよわいのです。
日本の上におおきな屋根が出来ました。
雨は全部あつめて、湖に配ります。
外灯はぜんぶとってしまいました。

誰の家でも、光る花だけが奇麗に咲いているのです。
町は昼でも、夜のようにまっくらになったのです。


彼女は、黒い布を顔からはずすと、にっこりと微笑んだのです。


end