せいぎのみかた
むかしむかし、あるところでふたつの村がたたかいをくりひろげていました。
おたがいにいがみあって、いっぽもゆずりません。
ちでちを洗うような、せいさんなこうけいが がんかにひろがっていました。
村長さんも村人も、早くけっちゃくをつけたいと、おおきな声でさけびます。
たすけて! せいぎのみかた! わるものをやっつけて!
そこへやってきたのがせいぎのみかたです。宇宙人らしく、銀のスーツをみにまとい、
きいろく光る目であたりをみまわしました。
「せいぎの、みかたがたすけにきたから、あんしんしなさい」
「ところで聞くが、どちらがただしく、せいぎなのか。私はわるものしかやっつけないから、
せいぎだというものは、せいぎだということをしょうめいせねばならないぞ。
いま来たばかりではんだんがつかないので、おたがいにせいぎだというなら、
わたしにせつめいしなさい」
ふたつの村の村人は、いかに 自分たちが正しいか・相手がわるものかをせつめいしました。
しかし、せいぎのみかたはなっとくしません。
「相手に人をころされたというが、人をころすことはわたしの星ではわるいことではないから、
せいぎのためならころされてもしかたないような、わるものだったのではないか。
ころされたものは、わるいことをしたことがない、まっしろなせいぎの人だったのか」
ふたつの村人がりょうほうともだまってしまったので、せいぎのみかたはたちあがりました。
「きみたちがたたかうりゆうは、どうやらおたがいに かってなせいぎを作ってしまったことが
げんいんのようだから、はなしあって、なにがせいぎなのか。おたがいまもるせいぎはなんなのか。
もういちどよくかんがえてみなさい」
「けっきょくせいぎのみかたであるわたしは、ルールのなかでただしいとみとめられたもののみかたでしかないのだから」
せいぎのみかたは、また来ることをやくそくして、宇宙へかえっていきました。
それから三年たちました。
「たすけて! せいぎのみかた! わるものをやっつけて! 」
村人のさけびをきいて、せいぎのみかたはふたたびやってきました。
「せいぎのみかたがやってきたからあんしんしなさい。ところで、せいぎのルールはきまったのかな? 」
「はい、せいぎのみかたさん。わたしたちの世界では、
三回ぐるぐるまわってかたあしでたちながら、じゅもんをとなえつつ、なすをかじり、まばたきを五回できることがせいぎです。
しかし、この男はそれができませんので、わるものです」
せいぎのみかたは、せいぎがきちんときまっていたことにかんしんしました。
「せいぎときめられたことができないならわるものだな。やっつけよう」
せいぎをまもれなかった男は、せいぎのみかたのパンチによって、宇宙のかなたへとんでいきました。
「ばんざいばんざい、せいぎのみかたばんざい」
せいぎのみかたは今日も、ひとびとのなかにうまれたせいぎを守ることができました。
end
(c)AchiFujimura StudioBerry 2005/9/2