再挑戦
サンタにおねがいを先に読むと良いです。
「さあ、今日はみんなにうれしいお知らせがあるぞ! 」
四年二組の教室に、若い男の先生の声が響きました。
「なんと、今日はクリスマスなので、サンタさんが教室に来てくれています。
みんなのお願い事を、何でもひとつ叶えてくださるということだ」
わーっ、と子ども達から歓声があがりました。
みんなが手を叩いて喜びます。
その喜びの声に、サンタさんはしずかに手を振って、にこやかに答えました。
「それでは、一人ずつサンタさんにお願い事をしましょう。」
先生がクラスのみんなをきちんとならばせました。
出席番号順にならんだ子ども達は、ドキドキする胸を押さえるようなしぐさをしながら
サンタさんをみつめていました。
「先生も、どうぞ」
サンタさんに突然いわれて、先生はビックリした様子をみせました。
「僕もいいんですか! 」
先生は気持ちを落ち着かせるように胸に手をあてると、
「八十五歳まで健康で暮らせるような体が欲しいのです」
サンタさんは袋から手を出すと、先生の胸の辺りにそっとかざしました。
先生には、なにかあたたかいものが自分の手のひらも通り抜けて、心臓までやってきたような気持ちがするのでした。
「これで八十五歳まで生きられるのですか」
サンタさんは大きくうなづきました。
先生は小さい頃にも、このサンタさんに会ったことがあるのです。
そのときにも願い事を叶えてもらったのですが、心残りがありました。
自分の人生を考えて計算し尽くしたとき、どうしても計算できないのは健康のことだけでした。
「もう一度サンタさんに会って、今度は健康な体をもらおう。八十五歳まで生きることが出来れば、僕の人生は満足したものになるだろう。
どうしたらサンタさんにあえるだろう、そうだ! 先生になればいいのだ」
サンタさんは子ども達の願い事を、丁寧にひとつずつ叶えていきました。
その姿を眺めていた先生は、改めてサンタさんの偉大さを感じていました。
全員のお願い事を叶えたサンタさんは、もう一度先生の前へ戻ってきました。
「わたなべくん」
先生は、サンタさんに名前を呼ばれてハッとしました。
「前の贈り物も、君は大事にしてくれたね」
サンタさんが目を細めて笑います。
「欲しいものじゃなかったけど、大事な宝物ですよ」
わたなべ先生も自分の鼻をなでながら、笑いました。
「先生をやめてしまうのかね? 改めて欲しいものを手に入れたのだから」
サンタさんが少し寂しそうに、先生の目を見つめました。
「サンタさん、僕はサンタさんのようなちからは無いけれど、子ども達の願いをかなえてあげたいと思うんです。
サンタさんも、どうかお元気で」
サンタさんはみんなの願い事を叶えて、また去っていきました。
end
(c)AchiFujimura StudioBerry 2005/12/23