ザンパン・ノウンパン
「せっちゃん、おじいちゃんの小さい頃はなぁ」
またおじいさんのお説教が始まりました。
せっちゃんは小学校に入ったばかりの女の子ですが、体が小さく、ご飯があまりたべられません。
今日もごはんを残してしまいそうです。
「ごはんもろくにたべられなくてなぁ」
この話はもう聞き飽きて、せっちゃんはただ、ただいやな気持ちになるばかりなのですが、
おじいさんはおかまいなしに話を続けます。
「そりゃあ、腹をすかせていたものだよ」
弟や妹にご飯をあげてしまって、何日もひもじい思いをしたとおじいさんは言いました。
せっちゃんだってご飯をきちんとたべたいのですが、どうしてもおなかいっぱいで食べられないのです。
「せっちゃんの読んでいるお話に出てきただろう……ほら、なんていったかな」
おじいさんはなにか思い出そうとしているようでした。
「おもいだしたよ、タイムマシンだ。あの機械でむかしに戻れたら、せっちゃんの残したご飯を
子ども達に食べさせてあげられるのになあ」
せっちゃんは黙ったまま、ご飯をゆっくりと食べ続けました。
「おじいちゃんは、ひどい人だな。せっかくタイムマシンでむかしに戻れるのに、
わたしが食べ残したごはんを、おなかをすかせた子どもにあげるなんて。
わたしだったら、もっとおいしいものやお野菜やお肉を、たくさん持っていってあげるのに。」
せっちゃんはそう思いましたが、おじいさんには黙っていました。
せっちゃんはもう、ごはんを残しません。ざんぱんが、むかしの子どもたちに与えられるのは、
あまりにかわいそうだと思ったからです。
おじいさんはにこにことわらいながら、ごはんをたべるせっちゃんをみつめていました。
end
(c)AchiFujimura StudioBerry 2006/2/1