絶滅危惧ゴミ
ひさしぶりに部屋の掃除と片付けをしていて、
「こんどこそ思い切って捨てよう!」といままで見てみぬふりをしていたゴミをまとめていたときの事です。
「十年前のパソコンの箱か。 もしかすると、こんなものを持っているのは、
この世界でもう僕だけなのかもしれない」
そう思うと急に胸が締め付けられる思いです。
こんなに邪魔なのだから、他の人はもうとっくに捨ててしまっているでしょう。
しかも十年前となると、パソコン自体捨てられている可能性もあるのです。
そうして周りを見回せば、もしかするとこのゴミが地球上で最後に残ったゴミなのかもと
疑いたくなるものばかりです。捨てることはできますが、二度と手に入れることはできません。
もし後悔したらどうすればいいのでしょう。
誰が見てもゴミだと思っていたものが、後に重要な歴史の手がかりになる場合だってたくさんあるのです。
何気なくとっておいたお菓子のパッケージが、キチンと束にして保管されていました。
自分の価値観を疑いたくなるアーカイブです。これこそゴミだろう。
記念に一枚だけとっておけばいいじゃないか。何も三十枚もとっておく必要はない。
しかし、もしも自分と同じ価値観の人が現れたらどうしましょう。
「いいなあ、懐かしいですね。その箱を僕もほしいです」
そういわれたときに「それではこれを」とお渡しできるだけの枚数は残したほうがいいのかもしれません。
同じ価値観を共有できる人は何人いるのでしょう。二枚では三人目に渡せません。
結局僕は、あまり物を捨てる事ができませんでした。
時間はゴミすら宝石に変えるんですね。
end
(c)AchiFujimura StudioBerry 2006/9/21
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