パン屋さんとスープ屋さんとお客さん
まだ十二歳の、仲良し三人組が森の中の小さな集落に住んでいました。
フレッドはパンを作るのが得意で、スニフはスープが得意でした。
二人が作るパンとスープを、いつも食べていたのがジェストです。
ジェストが二人に言いました、
「フレッドはパン屋さんに、スニフはスープ屋さんになったらいいよ」
大好きなパンとスープを作れるなら、いいかもしれないと、フレッドもスニフも乗り気です。
「ジェストは何になるんだい」
「僕はお客さんになるよ、パンとスープを毎日食べに来るよ」
「約束だよ……」
三人は約束しました。
そして何年も経って、フレッドはパン屋に、スニフはスープ屋になりました。
しかしお客が来ないのです。
「ジェストはちっとも来ない、これではパンを食べる人もスープを食べる人もいないじゃないか」
二人はずっと、待ち続けました。
ジェストはお客さんになれなかったのです。
なぜなら、お客さんという仕事はお金を稼げなかったからです。
フレッドはパンをスープに交換してもらい、スニフはスープのかわりにパンを受け取りました。
「なんだ、お客はいらなかったんだ」
二人はいつまでも、おいしくて暖かいパンとスープを食べて楽しくくらしました。
end
(c)AchiFujimura StudioBerry 2007/10/26
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