ある日、おれは苦しくて目が覚めた。 そこは確かにおれの布団だったんだが、 おれがおれじゃなくて魚になっているんだ。 ぴちぴちと音をたてて布団から飛び出した。おれは小さな魚だった。 まるでいま水から上がってきたかのようにびしょぬれのおれは、 呼吸が出来なくて苦しがっているのだ。 とりあえず水に入らなくては。 おれが本当に魚なら、空気から酸素は取れないはずなんだ。 おれははねながら、とりあえず部屋を出ようと思った。 はねればはねるほど、へやの絨毯がおれの表面の水分をとっていってしまう。 おれは水を探したけど、風呂は空っぽだしシャワーをひねることも出来ないし。 愕然とした。このまま乾くのか。それだけは避けたい。 ちょっとでも長く生きていれば人間に戻るかもしれないじゃないか。 最後の手段にでた。 洋式トイレの中に飛び込んだんだ。 情けなかったよ。でもよかった、昨日彼女が掃除したばかりだったんだ。 なんでこんなことになったんだ。考えてみる。 そうだ、昨日酒の席で「生まれ変わるならさかなだ」とかいっちまったんだ。 ああ、馬鹿だったな。今はまだ、魚になんてなりたくなかったのに。 海にいなくちゃ、魚になったって意味が無いや。 せめて海に住んでる魚になりたいって言っておけばよかった。 そのとき、へやのドアを開ける音がした。 ガチャッ。ドン。・・・カチャン。「るすなの?」 彼女だ!おおい、おれはここだよーー、連れてって水槽で良いから飼ってくれ! 彼女はおれに、 ★気がついた! ★気がつかない! |