年に一度の七夕と毎日の山手線


 あるところに、引き裂かれる運命の恋人同士がいました。
二人がそばにいることで、引き合う力が回転してしまい、
そこに超電磁が生まれ、人類だけでなく地球も危険にさらされるのです。
織姫と彦星が引き裂かれた本当の理由と、全く同じでした。
稀にこういう恋人たちが存在するのです。

 宇宙の真理に最も近い、ワガノマーという大きな存在が、
恋人たちに語りかけました。
「あなたたちは一緒にいられない。永遠に引き離さなくてはいけない。しかしそれでは二人が気の毒だ。
つきましては、織姫彦星のように、年に一度だけ川を挟んで逢えるという処遇にしようと思うが、いかがか」

 二人は泣いて反対しました。
年に一度、相手が彼の岸にいることだけを想像するだけなんて耐えられない。
もっと頻繁に、毎日、近くで逢えるようにしてくれ……と
ワガノマーにすがって頼むのでした。

そこで再度計算をし直し、二人が最も近く、毎日逢える距離と速度を算出した結果、

 山手線の内回りと外回りにそれぞれが乗っている状態で、
一日一回、新宿ー代々木間にてすれ違うこと
……ができるようになりました。

七月七日にかぎりません。
今日も二人は一日に一回、すれ違っているのです。


end

(c)AchiFujimura 2010/7/2




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