スティンガーホテルのお客

景色の素晴らしいリゾート地にある
スティンガーホテルには、いろんなお客様がきます。
その日も、ふしぎなお客様が来ました。

まだ小さな子供のそのお客様は、あどけない顔をしています。
大きな荷物をひきずっています。
「いらっしゃいませ、お客様。スゴイ量のお荷物ですね。
何がはいっているのですか。」
フロントでベルマンが声をかけました。
「大事なものだよ。地球のみんなが大事にするくらいの物だよ。」
お客様はいいました。

「そうなのですか。」
ベルマンが一歩下がると、お客はチェックインしました。

「今日も不思議なお客様がきたね。」
「そうですね。支配人」
偉い人の恰好をした支配人は、少しだけあるあごの髭をなでました。

お客様は、いったん部屋に入りましたが、また外に出てきました。
そして、ホテルの前にひろがる海へ走って行きました。

「お客様、なにをなさるつもりでしょう。」
暇だったフロント係は、身を乗り出して海の方をを見ました。

お客様はあの大きな荷物も持っています。
中身は、土でした。
それをこねて船を作るのです。
波が来ると崩れます。でも、お客様はまた作ります。

ついに船は出来上がりました。

お客様はどんどん海へ押して行きます。
海へ入ったら沈みました。でも、沈んだ船にお客様は乗り込みました。

夜がきて、朝が来ました。
ホテルの従業員が外に出ると、お客様も船もありませんでした。

「料金もらっておいてよかったですね。」
「そうですね。支配人」

今日も笑顔の支配人は、少しだけあるあごの髭をなでました。

end