塔を止めて
「塔を止めて」「塔を止めて」
赤い少女のよりどころは音をひねってページの中へ投げた。
一枚のゴムが生えるボタンを叩けば、めくる螺旋とドットの叫び声が乾いていく。
「塔を止めて……明日は裏返って」
顔をすする行列が塗りつけて跳ねるさまは、枝分かれした鼓動の片隅に沿い、
翻す天辺から呼ぶ頭がささやく。「それはイカ、または広告」
裏返った少女は密度の花に凹む時雨を隠せない。
人権は箱の上下に理を似せるのだ。
「塔をほのめかして」
手に上等のからくりが、粒とおなじ朝の繰り返しを醸す。
地球が塔として、海をさらけだして、ころがした二重の黒かもしれない。
「塔はまにあわない」
このままでは。
一生の天地だ。
奪われたとんがりを増やしてよせてかえそうとも、切り口が老人の停留所にそぐわない。
深い……幼い塗りに麦が踊るだろう。爪の東に男がはためくだろう。
「塔はにぎったままだ」
end
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