やご

「ママ。ほら、おじさんの田んぼでいろいろつかまえてきたよ。」
「あら、よかったわねえ。」
ママは、ケイちゃんのために水槽を用意してくれました。
ケイちゃんは、つかまえてきたおたまじゃくしやヤゴ、たにしを水槽に入れました。
みんな、たんぼにいたときと同じように楽しく泳いでいます。
「みんな、違うところに来ちゃったこと分かってないみたい。」

じっと水槽を見つめていたケイちゃんは見てしまったのです。
ヤゴのすばやい動きを。
おたまじゃくしを一匹捕まえたのです。
最初はぴくぴくしていました。逃げようとしていました。
でも、ヤゴはしっかり押さえていて、大きなくちでむしゃむしゃとおたまじゃくしを食べたのです。
おたまじゃくしの方がずっと大きいのに。
おたまじゃくしがほぐれて、かけらが少しただよっていました。

「ヤゴさんは、つよいなぁ。」
たにしはふるえているだけだし、ほかのおたまじゃくしはしらんぷりです。
そうしているうちに、ヤゴは2ひきめをむしゃむしゃと食べます。
またかけらが浮かんでいきます。
そのかけらをおたまじゃくしがひょいっとつまみ食いです。


その夜、ケイちゃんは夢をみました。
ケイちゃんは水槽の中にいました。
ヤゴに捕まってしまっていました。だんだんほぐれていって、自分がなくなろうとしているのに、
お母さんはふるえているだけだし、ほかのみんなもしらんぷりです。
ケイちゃんは飛び起きました。

泣きながら水槽をみました。
みんな寝ているみたいで、ヤゴもじっとしています。
ケイちゃんは水槽にてをつっこむと、ヤゴをつまみあげました。
そしてくちにいれました。
くちの中でヤゴがほぐれていきました。
「よかった」
「ぼくはヤゴよりつよいんだ。」

ケイちゃんはようやくぐっすりねむることができました。

end