今日も僕は一人で街を歩いていた。 周りに知ってる人は誰もいなくて、人の種類の多さにビックリさせられる。 「あっ、」 僕はふと、よろけて見せた。 近くにいた女の人が、「大丈夫ですか?」と心配そうに僕を覗き込む。 「あ、ハイ。大丈夫です、ありがとう」 僕は体制を立て直すと、また歩き出した。 知らない人はどうしてこんなにやさしいんだろう。 横断歩道の真ん中よりちょっと渡ったところで、考え込むしぐさをしてみた。 「ばかやろう、あぶねえだろ!怪我するぞ!」 運転手が僕にそう叫ぶ。 「すいません!」 慌てたフリをして、僕は小走りにかけだす。 知らない人なのにどうして心配してくれるんだろう。 僕のことを知ってる奴等は、僕がよろけたら笑って、 もし僕が死にかけたら喜ぶのに。 街はどうして、こんなに親切なんだろう。 人込みはどうして暖かいんだろう。 みんなはこのぬくもりを……そう、すぐ周りにあるのに。 昼間の星のように。 気づこうとも、探そうともしないんだ。 僕は明日も、この街を歩くだろう。end |