はじまる

わたしは半分だけしかないと、疑うことも無く確信していました。
わかっていたの、あなたに会うことも混ざることも。
あなたが来て…億の敵をものともせず、
わたしのもとに一番早く着いたあなたを
わたしはだきしめてつつみこんで、あなたとわたしは私になったの。

くらいくらい部屋。狭い部屋。
私の体がちょうど入るくらいの狭い部屋。
…最初はもっと広かった気がするけど……
でも、浮いているような心地よい空間。
「あなたには権利がある。」たまに聞える声。
私は、知らないところにいるようだけど…ここは私の中なのかしら。
ここで、あの人に会うまでは。違和感も無く自分だったのに、
おかしいんだ、私は私の中にいたのに今は外に出たがってる。

目を開かなくてもここの素敵さがわかる。ここのやさしさは無償。
あの声はどこから聞えるんだろう。
この歌は初めて聞いた。

こぽこぽ…どくん。
ふしぎな音とあわせて、私は歌を歌う。

「私はあなたの始まりをみたい。
私はあなたの笑顔の第一発見者になるつもりよ。
私はあなたの物語をみたい。私が終ってしまう、その日まで。」
その声は毎日、私にそう話しかける。

体温が上がるのを感じる。
私の笑顔は、この人に見せてあげよう。この人の笑顔も、私が発見してあげよう。

さぁ、出ておいで。
見知らぬ人が私に触れる。急にからだがおもく感じる。
こんにちは、ようこそ。
私が、はじまる。

end