自由

「かみさまお願い!ボクの夢をかなえて」
「自由になりたいんです」

由夫くんは今日も叫んでいました。
もう、何日もここで同じ事を叫んでいます。
「自由になりたい」

そんな由夫くんの前に、かみさまがついに現れました。
「もしかして、かみさま!?」
由夫くんが詰め寄りました。

「そうかもしれない、ちがうかもしれない。でも、私には由夫の願いをかなえてやることができる。」
「じゃぁ、かみさまだ!」

由夫くんはお願いをいいました。
「自由になりたいんです」
「自由?由夫はじゅうぶん、自由じゃないか。」
「どこがですか!?ぼくは満足していません。一生懸命、
自分の意志を通してみたり、学校に行くのを自分で拒んだり、
好きなものだけ食べたり、買い物もフリーマーケットだけで済ませているのに
ぼくは自由を感じることがまったくないんです。」

「由夫。君は、自由をはきちがえているぞ。それは自由じゃない。」
「ぼくは頑張って、自由を手に入れてきました。でも、満足しないんです。
ああ、ぼくには自由がないんだ。束縛されているんだ。」
「自由を振りかざしてはいけない。きみには、自由を探す前にもっとしなくてはならないことがあるよ。」

自由は不自由の中にあるんだ。
不自由を知らない人間が、自由を求めても、
本当の自由はあじわえないんだよ。

「きみにとって不自由とはなんだい。」
「鳥は、あんなに簡単に空を飛んでいるのにぼくは飛べない。
なぜなら重力が邪魔だから。鳥に産まれる選択もさせてもらえないなんて不自由だよ。」
「そこまでいうなら、重力を君だけなくしてあげよう。…ホラッ!」

「うわあ!」
由夫くんは、さかさまになってしまいました。
「なおしてよ!ひどいよ!」
「それが、君の望んだ重力の無い状態だ。重力があるからこそ、鳥は飛ぶ。
君たちの筋肉も維持でき、それによって自由に動き回れる。
人間の感じる不自由なんて、大体間違っているものだ。
不自由が本当に産まれるのは、人間の手によってだけなんだよ。」

由夫くんは近くの木にしがみつきました。

「しばらく、そうして自由についてかんがえなさい。
…それから、フリーマーケットのフリーは”自由”ではなく
”ノミ”の”flea”だ。」
かみさまはそう言い残して、もう2度と由夫の前に現れませんでした。

end