「夏休みにやろうと思っている地球に優しいこと」 先生が、そういうテーマで作文をかけといいました。 「ぼくは、空缶ひろいをしようとおもいます。」 「わたしは、お花をたくさんそだてようとおもいます。」 みんなが順番に立ち上がって、発表していきました。 「ぼくは、お祭りの金魚すくいの金魚はかわいそうだと思います。 ぼくががんばってたくさんすくってあげて、ぜんぶ川へ逃がしてあげようと思います。」 ケンちゃんがそういうと、みんなは 思いつかなかった!それっていいことだね!そうだ、金魚はかわいそう! と騒ぎました。 ケンちゃんは夏祭という夏祭に全部でかけて、友達とたくさんの金魚をすくってきました。 大きなビニールのボートに水をいれて、ベランダでひとまず飼っていました。 「けーんーちゃーん」ともだちのヨシくんが遊びに来ました。 「ケンちゃんに、ぼくのうちの金魚も川に放してもらおうと思って。」 りっぱな”らんちゅう”が袋の中でぽっかり浮かんでいます。 「いつも、ぷかぷか狭い水槽の中でうかんでいるんだ。元気もないし、 …大好きだからどうしようと思ったんだけど…かわいそうだから広いところへ 放してあげて欲しいんだ。」 ケンちゃんは、ヨシくんかららんちゅうを受け取りました。 けっきょく、夏休みの最後の日には金魚が136匹集まっていました。 ケンちゃんは、バケツに入れた金魚を、手押し車で河川敷までつれていきました。 おおきな川だから、きっとみんなのびのび楽しく暮らせるぞ。 重たいバケツを、顔を真っ赤にして引きずって、 ザザー!と川に流しました。 しゃがみこんで金魚を見ると、キリキリと流れに流されて、 とても楽しく泳いでいるとは思えません。 ヨシくんのらんちゅうも、ただ浮かんでいるだけでおよごうともしません。 ケンちゃんは赤い顔を今度は真っ青にして、川の流れと一緒に走り出しました。 「どうしたんだよう!ちゃんと泳いでよ!広い広い、川なんだよ! お魚の本当に住んでいるところなんだよ!?」 らんちゅうも、他の金魚も、くるくる回ってながれていきます。 白い鳥が、足元をながれる金魚を見つけて ヒョイパク。 と食べました。ケンちゃんは息をのんで、白い鳥を見つめていました。 そばを通りかかったおじさんが、笑顔でケンちゃんに声をかけました。 「おや、鳥さんにエサをあげているのかい?」 「わーん!」 ケンちゃんは、驚いておろおろしているおじさんのとなりで、 日が暮れるまで泣き続けていました。end |