「こんにちは。ぼくは、未来から君を助けるためにやってきました。」 そんなことを言いながら、あのロボットが笑ったのはもう何年も前のことです。 タイムマシンで公然と、未来のロボットがやってくるなんてことは今までなかったことだったので 当然、周りは大騒ぎでした。 最初は、困ったご先祖様をサポートしているだけだったのですが、 だんだんそれだけでは済まされなくなってきました。 はじめの仕事は、ご主人様のお情けからでした。 テレビを見ていたご主人様が、「ねえ、この人かわいそうだよ」 と涙を流す殺人事件の被害者たちを指して言います。 「あなたがそういうのなら」 ご主人様の喜ぶ顔が観たくて、ロボットは犯人捜査に協力しました。 事件は、ロボットの未来の道具で見事解決できました。 それからです。ロボットがあちこちに引っ張りだこになったのは。 当然、本業だったご主人様のお世話は出来なくなってきました。 朝も、昼も、夜もロボットは全人類のために飛びまわったのです。 そのうち、批評家がこぞってロボットの活躍を批判するようになりました。 あの場面は、あの道具を使ったほうが早く解決できたんじゃないか。 少し、出動が遅すぎたんじゃないか。 いろんな人がロボットを批判しました。特集番組がくまれ、批評本も出版されました。 こんなに過去を変えては、未来にも帰れない。 毎日10分だけもらえる休憩時間に空に浮かんだロボットの、 青いからだが夕焼けで真っ赤に染まっていました。end |