イヌ、ひとりかもねむ

そのイヌは まよいイヌです。
かいぬしも わからぬままに さまよいあるき
ある家に ひろわれました。

その家も 好きでひろった わけでなく、
いい人だねと いわれるために
イヌのかいぬし さがしたのです。

ところがこれが、 いくらさがせど みつかりません。
保健所に 連れてこうにも 世間の目…
とほうにくれる 家の人。

おもいだしたら その前も
「どこかに行けよ」 そう言って
クサリはずした ご主人を
うらんだことも あったっけ。

今度の家も やっぱり同じで
イヌなんて かうつもりなく

しぶしぶぼくに いきてくために
ひつようなだけ ごはんをくれる。

イヌ、長し夜を ひとりかもねむ。

end