願い事、かなった

とつぜんのできごとでした。
家のちかくにある祠の前で、ふざけて逆立ちをして「ワン」と言ったときです。

祠から何かが飛び出しました。良くみれば、それは祠に封印されてたもののけでした。
偶然にも、ぼくは封印を解く儀式と同じことをしていたようです。

「私を自由にしてくれたお礼として、ひとつだけ願い事をかなえてあげよう。」
もののけはそういいました。
ぼくはあせりましたが、すぐに心を落ち着かせて考え始めました。
(永遠の命?いや、なんとなく怖いからやめておこう。
世界征服?…頂点にたってもなぁ。
そうだ、お金にしよう。たくさんお金を貰おう。それで遊んで暮らそう。)

でも、ぼくは知っていました。
これまで、大金を手にした人たちがどうなってしまったかを。
みんな、周りの欲望に巻き込まれ、悪いやつに狙われ、金を守るために金を使う。
そんな面倒なことが起きるのはごめんです。

ぼくはお願い事をしました。
「一生、お金に困らないようにしてください。」
祠が光りました。「願い事、たしかに聞き届けた」

それから数日たちました。
ぼくは焼け野原で、こげた樹の下に身を潜めていました。
戦争がおきたのです。あっという間に世界は火の海になり、何もかもが焼け尽くされました。
戦争はまだ続いています。
みんな食べ物を求めてさまよっています。
この世界では、お金なんていうものはただの紙切れ、金属の塊に過ぎないのです。

ぼくは一生、お金には困りませんでした。

end