時の穴 時間には穴がたくさんあく。 久しぶりに、久しぶりにむかし仲良かった友達と会った。 最後にあったのはもう何年前だろう。死に別れる前に、会えるものならもう一度会いたいとずっと思ってた人だ。 「やぁ、元気だったかい」 「やぁ、元気だったかい」 二人ともこういっただけで、黙ってしまった。 近況を聞こうにも、どうきいたらいいのかわからない。 それは向こうも同じようだ。 昔は、共通の友達のことや、相手の興味があることを選んで喋ることが出来た。 でも、いまは共通の知り合いもいない。 「そういや、アイツが死んだってさ。」 「ああ、アイツも病気でずっと苦しんでるよ。」 口をついて出るのは、ありきたりな他人の不幸ばかり。 「あのころ、」 「ああ、あのころ、」 「こんなことがさ…」 「あんなこともさ…」 ようやく話しがはずんできた。 時は一瞬にして、前に会ったあの頃へ戻る。穴をジャンプして。 穴に気がつきながら、穴を二人でジャンプして、 ようやく開いた穴の真ん中にある…二人の共通の時間へたどり着いたね。 |