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卒業式

■小学校の卒業式。
うれしかった。早く卒業したかったから。
中学に行っても、誰とも別れないし。みんなおなじ中学に行くからね。
でも、卒業式の後の二次会、私はなぜか一人でレストランに座っていた。
仲間はみんなどこかへ遊びに行ったらしい。
私はみんながどこへ行ったかも知らない。
一人寂しくぽつんと待っていたら、注文を取りに来た。
注文しなよ、と大人達が言うもんだから好物のグラタンを注文してみた。
そのうち友達が帰ってきた。友達もみんな注文をした。
お食事が来てみたら、私だけグラタン、あとはみんなハンバーグ。
「あれ、なんであっちゃん違うの食べてんの。」
…仲間はずれ…

■中学校の卒業式。
少し寂しかった。結構楽しかったし、高校はバラバラになるし。
そこで、記念に皆(男子限定)に、私の名前を違うアクセントで呼んでもらった。
多分、世間一般で呼ぶであろうアクセントと、なぜかみんなちがう呼び方をするのが気になっていたのだ。
(ちなみに、うちは親も一般的じゃない方のアクセントで呼ぶので、そちらがただしいのか!?)

■高校の卒業式。
私は、遊びに行こうよ〜と誘ってくれる友達にちょっと待っててと言い残して、
人の少なくなった校舎を走り回っていた。
ずっと好きだった人に、最後のお願いと称して抱きしめてもらおうとずっと計画していたからだ。
やさしい人だし、ずっと仲良しだったし(?)、振られたけど私の気持ち知ってるし、
きっと抱きしめてもらえると確信していたのだけれども。
ここに居るかな?と覗いた部室には彼はいなくて、一人後輩が立っていた。
「先輩!卒業おめでとう」
「京都に行っちゃうんだよね?寂しくなるね。」
後輩がそう言ってくれた。「ありがと〜。」といつものようにニッコリ言う。
「お祝いに…俺から一言ね。ずっと好きでした」
「…嘘でしょ?」
後輩、いつもの笑顔で笑ってるだけ。否定も肯定もしない。
「そろそろ出かけるよ〜!用事すんだか!?」
遠くから友達が呼ぶ。「うん…待ってて」
それじゃ、またね。と後輩に声をかけて、私は友達の方へ行った。
ずっと好きだった人には、わたしが京都に行くことも告げられなかった。
其れが心残りなのか、今でも彼に抱きしめてとねだる夢をちょくちょく見る。
夢の中での彼の、ちょっと困った顔を見ると、言わなくて良かったのかなとも思う。

■専門学校の卒業式。
またね。
また遊ぼうな。
電話するわ。

そういって、まるで明日も会えるように別れた皆。
全国から集まったみんなだから、また全国へ散らばっていった。
あの卒業式が最後になるかもしれない。
でも、あの日はまったくそんな予感すらしなかったんだ。

これから先、卒業はたくさんあるだろうけど、式の日取りはまったくわからない。
ただ、やっぱり私は、いままでの日常が日常でなくなることが怖いといつも思ってしまうのだ。

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