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ある秋の日

或る秋の日。

私は当時バスケットボール部のマネージャーで、
「ナンバリングシャツ」の洗濯もその仕事の一つでした。
ナンバリングシャツっていうのは、ナンバーの書いてあるタンクトップで
練習時にユニフォームを着る代わりに、敵味方を分かりやすくするために着るのです。
これは汗でびっしょりぬれて数倍の重さになってしまうので、
毎日洗って乾かさなくてはならないのです。

私と先輩マネで、1日交代で洗濯をしていたのですが
ある日、私のあらってきたシャツからへんなニオイがするというのです。
そのニオイはなんか鼻にくるニオイで、クサイというわけではないのですが
気になってしかたないニオイです。

しかも、どことなくみんなかいだことのあるにおいなのです。
「これ、何のニオイだっけ?」
「よく嗅ぐニオイの気もするし…」
しばしニオイの正体さがしでゲームはオヤスミ。


「あ!わかったぜこれ、なんのニオイか!」
ひとりの選手がそう叫びました。みんなの視線がそちらへ。
「これ、稲のモミガラを焼く時のけむりのニオイだよ」

ああ〜あ〜…

と、みんな納得。
納得できるみんなも、ニオイを当てちゃった彼も、
そんなニオイを洗濯物につけた私も、
なんか変わり者!?

言われてみれば、私の家ではその前の日に、
もみすりが済んだモミガラをピラミッド型に積み上げて
火をつけて燻し焼きしていたのです。(しかも、洗濯物のとなりで(笑))
これは、後で炭と一緒にこたつに入れて、火種にするんですよ。

…秋を感じるお話でした。



* モミガラとは>稲を刈り、乾かした後でお米の入った身の部分(もみ)を取り除く「稲こき」が済んだら お米の粒から殻を取り除きます。(モミスリ)その取り除かれた殻のことを「モミガラ」と言います。

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