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ある雨の夕方…


私が高校生のころの話です。
高校は自宅から10Kmほどはなれたところ。標高差が150mほどあるので、大変な道のりです。
列車は1時間に1回しかこないので、好きな時間に出かけられないことから
たまには親にナイショで、危ないのをしりつつも自転車で出かけていました。

ある暑い日。
夏休みの午前中に班活(部活のこと)の練習があったので、私は夕方に自転車をこいで家路を急いでいました。
150m上に自宅があるので、ずっと上り坂のきつい道です。

途中で雨が降り出しました。傘はもっていないし、自転車をこいでいるし
そのまま走っていきました。

ぬれたまま少し走った頃でしょうか。
あまり、人ともすれ違わないような田舎の道で
1台の車に気がつきました。
最初は特に気にしていませんでした。誰も乗っていないし、道に止められているだけの軽乗用車です。
白色の、何の変哲もないちいさな車。

少し走ったところで、その車が私を追い越していきました。
私は「さっきの車だ、」と気がつきました。でもそのときはそれだけでした。
ところが、おかしいことが起こりました。また少し走ったところで、その軽乗用車が道に止まっているのです。
今度は運転手も乗ったまま、エンジンもかかったままです。
少しヘンだな、とその車を見つめながら再び自転車で追い越しました。
そのあとは気になって仕方がありません。あの車はナンだろう?
自分がぐしょぬれで走ってることも忘れてしまうほど気になってきました。

また少し走ったところで、同じ車が私を追い抜いていきます。
これは本当に怖い!またどこかに止まっていたらどうしよう。
田舎なので、ほかの道を走ることも出来ません。(1本道)おびえながら走っていました。
そのまま、軽乗用車は現れなかったので、「よかった、気のせいだ。今回はそのまま走っていっちゃったんだ」
と安心して、とにかく家路を急ぎました。

私の好きな坂に差し掛かりました。交通量も少ないし、いままでのぼりをこいできた私にしばしの休憩を与えてくれる急な下り坂です。
これをすぎちゃえばもう自宅は近い。(5分くらいでつくかな)
雨もだんだん弱くなってきたし、急いで帰ろう。
そんなことを考えながら下り坂でなおペダルをこぎ、スピードアップする私。
「げげげげっ!!!」
下り坂で前をみると、なんと坂の終わりの橋の上にさっきの軽乗用車。
このスピードで追い越して、(普通に追い越せればいいけど)運転手側のドアでもあこうもんならぶつかってしまうだろう。
おびえながら、車と十分な間を開けて追い越そうとする私でしたが、

そのとき!バーン!とタイミングを見計らったように運転手側のドアがひらき、運転手の女性が飛び出してきました!
女性は大きめのTシャツをざっくりときて、下はスパッツだけ、はだしにスニーカーと言う部屋着っぽい服装で、明らかに私をにらみつけ
「*+@4#&%*+¥!!」となにか叫びながら、ずぶぬれで走ってる私のおなかに平手でパンチを食らわせました。
痛くはなかったのですが、とにかく何がおこったのか私には理解できず、車のほうを振り返りながら必死で自転車をこいで逃げました。
女性も急いで車に乗り込むと、あっという間に逃げました。(逃げたのか?)

その後無事に家に着いたのですが、何度考えてもあの女性の行動が理解できません。
もちろんみたこともない人でした。
雨の日に自転車をはしらせ、ずぶぬれになるたびにその日のことを思い出してしまうのです。


……後日談……
私なりにあの女性の行動の意味を考えてみました。
1.「雨の中、こんなにずぶぬれで!ダメじゃない!」と注意を促したかった
2.実は女性は宇宙人で、私の腹になにかを埋め込んだ

…どうもしっくり来ないので、母親に相談してみました。
するとこんな答えが返ってきました。
「きっとその人は、赤ちゃんができなくて悩んでいたのよ。そして、健康そうなあなたの若い体がうらやましかったのよ。
だから、そんな行動に出ちゃったのね。許してあげなさいね。」
…私の想像力がたくましいのは母親譲りだと思われます。

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