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獅子舞


ふと、獅子舞のことを思い出した。

 よく日常会話で獅子舞の話を出すのだが、みんな「は?獅子舞?」と聞き返してくる。
私「パチンコ屋なんて、獅子舞のときしか入ったことないよ〜」
相手「は?獅子舞?」
私「獅子舞の頭がおもくってさ、歯だけでささえるから、歯が抜けたり血が出たりしてさ!」
相手「は?獅子舞?」

 みんな、獅子舞を子どもの頃にやらなかったんだろうか。
またこれはローカルな行事なんだろうか。
ちょっと検索してみても、正月に獅子舞を地域の子どもたちが全員参加でやることになっているところが見つからない。
(ちなみに、地元のものはいくつか検索にヒットした。やっぱりローカル……?)

 獅子舞は私にとって、かなり嫌な思い出ばかり残る行事である。
田舎の・さらに細かい地区に分けられた子ども会では、小学一年〜六年全員集めても20人に満たない。
よって、この大変な行事はほぼ強制的に全員参加だ。
参加したくなくても、参加しないことで仲間はずれになったら嫌なので、泣きながらでも参加する。

 最近は子どものことを思ってか/親が早く終わらせたいためか、午後二時ぐらいからはじめられるが、
私が小さかった頃は夕方五時・六時に道祖神(註1)前へ集合。
気温はマイナス十度とかそんなもん。一月だから寒い。

【獅子舞という行事のながれ】
・喪中以外の家は全戸、訪れる。喪中の家は大人が把握している。
 地域の店も、スナック・パチンコ屋など普段子どもが入れない場所でもお店が許可すれば舞う。
・家の前で「どうそーじーん!」と叫ぶと、縁側が開け放たれる。
・年長者(六年生、人数が少ない場合は五年生も)が獅子頭を装着・布の後方に低学年(一年生〜四年生)が入る。
・家の人が座敷などの広いスペースに座り、部屋の入り口でかたひざを立てて獅子スタンバイ。
・太鼓の子が「そーれ!」と声をかけてたたき出すと、残りの子どもがみんなで歌を歌う。
・獅子は太鼓に合わせてあるきながら、決まったところで鈴などがついた棒をシャランと振る。
・歌が終わると家の人々から拍手が。獅子は一人一人の頭上へ移動し、カタカタと獅子の口を動かす。
 これをやってもらうと、風邪を引かなくなるとか。 怖いので、泣き出す小さな子どももいる。
・家の人がお菓子・みかん・リンゴ・金などをくれる。決まった袋に突っ込んでもらう。


 何しろ、意外に戸数が多いので大変だ。ポツンと離れた家に行くのも大変だ。終わると11時とかになっている。
動きの少ない、しかも屋内に入らない行事なので、その間の寒さは半端じゃない。
獅子に入っていると、部屋に入れるのでしばし暖かいが、獅子は暖かい部屋に入れても嬉しくないほど嫌な物なのだ。

 私の学年は、地域に二人しかいなかった。私と男の子だ。しかも二人は仲が良くなかった(笑)
協力しなければこの大きな行事は無事に終わらせることが出来ない。
下の学年には三人ぐらいいた気がするが、私たちが六年の時に手伝ったのは唯一いた男の子一人。
この「獅子舞」は女の子にはきついのだ。
やったことがない人は、獅子の内部に入ったこともないだろうから、図で解説する。
獅子舞の内部
絵がヘタクソなのはご愛嬌……
絵では、後ろの人が浮いてますが、本当はちゃんと地に足が付いています(当たり前)。

 両手に棒をもつ関係で、獅子頭を手で支えることが出来ません。
どうやって獅子をかぶるかといえば、咥える棒に噛み付くわけです。
みんなで使うものなので、手ぬぐいやタオルを巻いて噛み付くわけですが、かなり重労働です。
私が(確か)五年生のときまで使っていた獅子頭はぼろくなったので、六年の時に新しいものを地区で買ったわけですが
それが今までの倍近い重さ、なんと4〜5kg!ソレを噛み付くだけの力で支えるわけですよ。

乳歯が抜ける人。抜けなくても血が出る人。とにかく獅子をやるにはカクゴがいります。
子どもの頭は獅子頭より小さいので、頭に引っ掛けることも出来ません。厳しいです。


 獅子の人もつらいのですが、「みかん係」も厳しいです。
その名の通り、みかんを入れてもらう袋を持つ係。最初は楽しいんだけど、そのうちみかんの重みでずっしり重くなり、
下のほうのみかんがつぶれてジュースが(笑)出てきます。みかんの匂いもすごいです。引きずることも出来ません、かわいそうです。

 一番楽しいのは、太鼓係(もってあるくのは大変)とお金係。お金係は、お金を入れてもらう袋の人。
ザクザクと大金が袋に詰まっていくので、重くても嫌じゃありません。アレは楽しそうでした。


 それでは、最後に獅子舞の歌をご紹介して、締めくくりたいと思います。
検索ででてきた、同じ町の獅子舞でも、歌は全く違った……(歌詞の内容すらかぶってない!)

 ♪ごーしんじんの ごはいをもって あくまをはらうとな すとーんすとん
 ♪すりこぎぼうに みそがちょっぴり くっついたとな
 ♪くっついたも よーけれども あちらのあねさん ふかしとらいとな
 ♪あんまり こーこー こーするなーよ
 ♪やぐもふとんも でーなしだ〜〜〜

最後の「やぐもふとんも」ってところは、「やどもふとんも」かもしれない。「やぐもふとんも」じゃ同じものだもんな。
しかし、意味がわからない。こんど父上にでも意味を聞いてみようかな。
ちなみにこの歌は、父の小さい頃から変わってないらしい。
今年も聞いたが、変わってなかった。このまま変わらないと思いますが。


(註1)「道祖神」
 道端に二人仲良く寄り添って立っているおじぞうさんのようなもの。
旅人の安全を見守る神様で、あちこちに立ってる。
これも検索したら、なんか長野に多いらしい……関東甲信越地方に広がる信仰のようだ。
うちの近所にも道祖神様がいたので、よくドロ団子や花束などをお供えしていた。
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