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なにしにとおえ

長野の方言で気になる言葉として、「なにしに」と「おえ」がある。
結構使うんだけど、人に説明する段になると詰まってしまう。一言で標準語に言い直せない。
単語ではなくて、状況や行動を表す言葉だからだろう。

なにしに

 説明が難しい言葉。標準でも普通に使われている「なにしに」と混同され「方言じゃないよ、普通に使うよ」なんて よく言われるんだが、(使うニュアンスによるけど)絶対に方言だ!

・標準語の例)そんな遠くまで、なにしに行ってきたの。
・標準語の例)あんた、うちへなにしに来たんだよ。

主に、「行く」「来る」などの、移動系の動詞につながることがほとんどなのが標準語の「なにしに」。
さて、信州における「なにしに」の使い方はこうだ。

・信州語の例)そんなこと言われたって、なにしに
・信州語の例)あとからのこのこ手伝いにいったって、なにしに

主に、先にこれからする予定の行動や言われた文句の後に、一番最後の単語として「なにしに」が使われる。

二つの「なにしに」について、「なにし」の部分は同じような意味だと思う。ただし、最後の「に」が、全く違う意味の文字なのだ。
標準語の「に」は助動詞(あやふや)で、「しに」という動詞になってるわけだ。
信州語の「に」は、語尾の強調。「ひさしぶりだに」「よくやってるに」など、最後に「〜じゃない。」って言う感嘆のような 意味合いをつける、または暗に「でしょう?」と促すときにもつかう。

なので、信州語の「なにしに」は、意味をわかりやすく書くと「そんなこと言われたって、どうしろというのか。いや、どうしようもない。」 という、古典で言うところの「かは」みたいな反語であるといえると思うのだ。
もうひとつのほうも、「あとからのこのこ手伝いにいったって、何が出来るというのか。いや、何も出来ない。」というニュアンス。 行動することはあきらめている。または、文句への言い訳のようなニュアンス。

もちろん、標準語の「なにしに」も使います。語尾にこなかったときは普通です。
「なにしに山まで行っただい」とか……

おえ

「おえ」はかなりオールマイティな言葉。掛け声の一種。主に若者・男性が好んで使う。

■抗議として
「おえ!(やめろや)」(おいおい、やめてくれよ)
「お〜〜〜ぅえ〜〜〜、お〜〜〜ぅえ〜〜〜?」(子どもが泣きながらだだをこねている)

■呼び止めとして
「おえ!」(おーい)
「おえ、まつだ」(おい、まってくれよ)

■感情表現として
「おえ!」(ビックリ)
「おーえー?」(どうしてくれるんだよ本当にもう的)
「おーえー!?」(ありえねえ!的)

若者達は、「やめろや」「まじかよ」などの前によく「おえ」をつける。今風な感じだ。(笑)

……というように、そのときの感情が「おえ」の二文字でふしぎに伝わってくる、変わった単語です……

文・藤村阿智 (C)AchiFujimura 2004/12/25
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