【映画の感想】「震える舌」見た

アマゾンプライムビデオの見放題にあったので、以前から気になっていた映画「震える舌」を見ましたよ。

闘病ものということで……
前もって知っていたのは「怖い」「むしろホラーより恐怖」「子役がスゴイ」
ってあたり。

1980年の映画です。

舞台は新興住宅地、巨大団地の一角は埋め立て地で、その原っぱで子どもは自由に虫を追いかけたり泥をこねたりして遊んでいる。
そんなある日、幼い女の子の様子がおかしくなってくる。両親は病院に連れて行くが、医者は「風邪じゃないか」「わがままだから診ない」「心因性のものだ」という判断。ようやくたどり着いた大きめの病院で、老医師がきちんと調べてくれた結果、娘は破傷風菌に感染していた……

という導入でして、そこからはひたすら闘病するわけですが、もう治療が拷問のよう(に見えるけどたぶん必要な処置で……)なので両親はそんな子どもの姿にショックを受けて精神的に参ってしまう。発作を見張る看病で夫も妻もフラフラだし、担当医はまるで悪魔のように冷静に治療をこなしていくし、子どもは泣き叫ぶしで本当に怖い。もし実際に自分の子どもがそんな風になったら同じようにショックを受けそうだ。

でも、ショッキングな描写が核ではなくて、もっと静かなところの心の動きの描写が丁寧で良かった。

母親が細かく発作の様子を記録していくところ、自分も倒れそうなのに子どもと妻を支えようとする父親、父親が破傷風菌に夢の中で語り掛けるシーンも良かった。
「せっかくこの子の中に住めるところを見つけたお前は、この子を殺してしまうのか?お前も消えるんだぞ……」って感じで。
amazonレビューでは「菌に話しかけ始めて父親も精神的にヤバイと感じた」って人もいたけど、私なんかわかるなあそういうの。エボラとかエイズとかインフルとか寄生虫・ガンにも同じことを感じるよ私は。

自分がこの恐ろしい病気に感染したんじゃないか?と両親二人とも疑心暗鬼になって、全員の命をあきらめかけるところもリアルだった。こういう状態だとそうなることもあるだろうな。

両親が極限までの看護疲れと混乱・パニックを経て、ようやく「休もう」と動き始めて、久々に自宅に戻った父親が風呂をためて酒を飲むところは泣けました……


途中で「怖い。つらい。やめよう」と思った人は、せっかくだから最後どうなったかだけ見たらどうでしょう。んで見る気が出たら途中も見ればいいかも。

とにかく破傷風怖い。めったにならない病気、というのはワクチンの予防接種があって、その免疫が切れるころにはもうみんな泥遊びなどしないからというだけなんだよね。気を付けよう。どこにでもある菌だ。災害時や海外活動では感染しやすくなるということで、そういうときは予防接種しなくちゃですね。もうほんと怖い。

amazonレビューにも「私はこの映画を見ていない、見られない。破傷風で亡くなった友人のことを思う」というものがあって、そうだ、そういう病気なんだと再認識させられます。


この映画は1980年公開の映画ということで、私の幼い頃の文化と被ってるわけですね。だからなんだか、ちらちら見える家にあるものとか家具・家電のデザイン、空気感が懐かしい感じだった。

あとドラえもんね。病院のロビーの売店?にあるドラえもんの何かがずっと映り込んでて気になった。
父親が家に帰るシーンでは、レコードプレーヤーの奥に「ぼくドラえもん/ドラえもん音頭」の歌詞カードが開いて飾ってあった。

最後の最後で「ドラえもんの絵本、買ってきてあげるね……」と母親が言うので、
「とうとう言及されたぞ」と思った。

1980年というと、1979年にドラえもんのアニメ(テレビ朝日版)が始まって1年ぐらい。子どもたちに人気が出たのかな。そこの記憶はないのでどういう風に世間が・子どもたちが騒いだのかが実感できないので、ちょっとこういう風にふとしたところで見せられると「おおっ!」と前のめりになってみてしまいます。

そういう風に、作られた時代を感じながら映画を見るのも楽しいです。映画自体は怖かったですが……