【本の感想】漫画版 ハーモニー全四巻(原作・伊藤計劃、漫画・三巷文)

「<harmony/>ハーモニー」漫画版ようやく全巻読みました。

以下ネタバレというかちょこちょこ内容にも触れるので、まだ読んでなくてまっさらな状態で読みたいし楽しみだよ~読むよ~という人は私の感想は漫画or原作読後にチェックしてね。

表紙もいいよなあ。

原作の表紙がこれだから(白地に乗せるとわかりにくいけど)

—-ここから

—-ここまで

こういう白い表紙なんですよ。最初からなにか書いてあったらそれはそれでうけいれたかもしれないけど、この白い表紙で、最後まで物語を読んだら「この白い表紙しかありえないと言えるな!!」って言う納得感があるわけです。(ちなみに初出の単行本版はイラストとデザインで、それはそれでよいと思います。ただ私としては「この白い表紙いいなあ」と思っています)

なので、漫画版の白地にキャラクターだけの表紙はすごくいいと思う。絵が魅力的だからこれだけでもとてもいいし。

漫画版最高だったね

最高だったと思う。

キャラクターは映画版のキャラデザと合わせてあって、絵柄も似ていると思う。でも映画版でもやもやした「原作の魅力……映画で見えてこない」って感じ、それが漫画版ではしっかり魅力的になっていたと思う。

映画版ハーモニーも、伊藤計劃原作の映画化3作の中では一番すきである。でもその一番すきなハーモニーが、映画全体の中で好きかと言われると正直全然上位に入らなそうだなって思う。

映画で見てて改めて感じたのは、伊藤計劃の長編小説って舞台があっちこちに飛ぶのね。世界中駆け回るの、主人公が。虐殺器官もそうだし、ハーモニーもそう。原作小説を読んでないんだけど(円城塔さんの作品だと思っているので)屍者の帝国も映画で見る限りそんな感じだった。で、映画の2時間ぐらいだと、目まぐるしくなっちゃうというか。いどうしていどうしていどうして!って感じでお話が語られるので、今どこにいるのか、舞台を感じるのに時間がかかっていると見ている人が置いて行かれてしまう。気がしている。

だから、あの時間ではちょっと無理かなと。ただしアニメで1クールやったらもっさりしてしまいそう。あまり展開がない回とか出てきそう。1冊の小説の中での構成を、単純に分割すると毎回盛り上がったり引きがあったりするわけじゃなくなって、楽しめる感じにならないだろう。


漫画はその点、読者のペースでじっくり読めるし、単行本だと特にまとめて読むから山場がなかなか無くて会話劇でもそんなに気にならない。

絵がある割にはお話は分かりにくかったかな~と思う。でも原作にかなり沿ってたと思うのでしょうがないかなあ。
絵柄はハードボイルドでかっこいいと思う。トァンちゃんもミァハも現実離れした美しさと冷たさ、そうあの二人似てるんだよね。そこは作中でも、ミァハを失ったトァンちゃんがまるでミァハをよみがえらせたように、ミァハだったらこうする……を基本に行動しているからだと読み取れたはず。

特に四巻のラストシーンではまったくもって、二人は同一のものから分かれたような描かれ方だったなあと。あと絵がきれいで、風景もきれいで、からっぽでなーんもなくてよかったなあ。原作ファンが「ああ~そうだそうなんだね……」と思えるような……この場合の原作ファンというのは私のことですが、そういう気持ちになりました。


ただ、読み終わってラストのラストの所を読んで、この物語がつづられている形式の大前提を思い出したら、

「これは映像化・可視化するのは野暮ってもんなんじゃないか?」と思ってしまった。だってこれを語っている人も、受け取る人も、このような絵や状況は感……


以上です。