【漫画の感想】リウーを待ちながら 全3巻(朱戸アオ)

先日読んだばかりですが、「リウーを待ちながら」の紹介を。

ネタバレというほどでもないけど内容に触れるので、まったく知りたくない方はこの先読まないでね。というかネタバレ感想読みたくない人は作品名でググって出てきたブログなど読まずに即行で買いなさい。

全三巻だから全部一気に読むのがいいと思います。

作者の朱戸アオさんが Twitterで、新型コロナウイルス騒動を受けて「言いたいことはすべて漫画に描いた」とおっしゃっていた。リンクには第一話の試し読みがあった。それを読んで、そのまま3巻全部買ってすぐ読んでしまった。

感染症と戦う人々と医療従事者の話。

本来ならその場所にないはずの感染症がどんどん蔓延し、地域を覆っていく。目に見えない恐怖と、治せないつらさと、死との闘い。

日本のとある架空の場所で起きる感染症のアウトブレイク、病気はペストです。

ペスト……日本では流行しないからあんまり怖さを知らなかったけど、ほんと怖いなあ。漫画的に派手な症状の描写もあると思うけど、感染力が強くてワクチンもなくて、しぬ確率が高いという最悪の病気ですよ。

人間の流行が収まっても、自然界のどこかに潜んでいるので、また発生するというのが怖い。


「リウーを待ちながら」は、登場人物がぎゅっと絞られているところが良いと思う。医療もので、しかもたくさんの人が亡くなるという話ではいろんな人の人生とか、かかわる人が多かったり、視点もたくさんあったりするものだけど、この作品では主に3人の視点で感染症との闘いが語られる。

特に、最初は患者でしかなかった女子高校生・鮎澤さん(娘)が軸になるところでは、世界の複雑さやぶつけられない気持ち、流されるしかない無力感、でも懸命に戦っていく姿が凝縮されていると思う。全員にそれはあるんだけど、専門家じゃない市民だというところが読者とできごとをつなげてくれる。

コメディリリーフでもあり、良く動き回り頼りになる、人情家のカルロスの存在もいい。「気持ちはわかるけど、ダメだよ……」という行動をしちゃったり、人間らしさが強いというか。非常事態ではお医者の玉木先生、研究者の原神先生は専門家だからストイックなんだよね。

その人たちが見せる「人間らしさ」が最後のクライマックスで(感染症で失われる数々の命から離れたところで)心を揺さぶるので、その張り詰めたストイックさも「ストーリーの進め方」の一部なんだろうなあ。


強力で、目に見えなくて、どうなるかわからない感染症の恐怖を目の当たりにして人間がどうなるか、政府の対応は、市民の反応は、なにが問題か……という、まさにいま現実で起きているようなことが漫画の中でもどんどん起きるのですよ。

さすがにペストは致死率が高すぎてパニックが半端ないですが、同じことだよなあ。ものも足りなくなったり、人間が原因の悲劇が生まれてしまったり。


ラストは「エーッ!そんな」って感じでショックでしたね……まあ誰がどうなってもおかしくないわけですけど、つらい……

希望もあり悲しみもあり。

あと、カミュの「ペスト」読みたくなりました。

舞台もアルジェリアらしいし今度読んでみようと思います。

 

投稿者: AchiFujimura

Blackstrawberry.net管理人藤村阿智の日記と言うか雑記的なページ