2023年12月、自作紹介まつり!
12月は毎日、自分の作品から1ジャンルにつきおススメの10作を紹介するよ。
どんな作品があるかぜひチェックしてね。
これまで紹介した作品の記事はこちら!#藤村阿智自作紹介まつり まとめ
ショートショート「ブラックドウワ」から10本紹介!
お気に入りの掌編シリーズ「ブラックドウワ」は気軽に読める小さなお話。ちょっとひねくれたお話が多いので「ブラックドウワ」という名前にしたんだ(考えたのは1998年……)。サイトの名前も「Blackstrawberry」なので、ブラック○○という名前でいろんなコーナーをやっているのです。
特にお気に入りを10本紹介しよう。今の時点で全部で243本あるので10本に絞るのムズカシイ。他にもお気に入りいっぱいあるよー。
一番最初に、ぜひ前提として「ブラックドウワ」でどんなものを描きたいと思っていたのかについてのページも見てみてね。
https://www.blackstrawberry.net/nov00.html
ブラックドウワ
【1】【130】秘密の未来(03/5/16)
その日に何があったのか、いまでは知るすべもありません。
私は朝起きたとき、まだ夢の中にいるのだと思いました。いつもの寝室ではないけど、見覚えのある部屋、
真新しい部屋の壁の色、古いアイドルの新しいポスター。混乱しながら私は、隣に寝ている夫に声をかけました。
「ねえ、あなた」
その若い声に自分で驚き、寝室には私しかいないことを知り、手の幼さにも気がついたのです。私は若くなっていました。
「あの頃に戻れたら――」という想像、私はどちらかというと怖くてできません。子ども時代にはあまりいい思い出がないから戻りたくないし、今が気に入ってるので「今」を失いたくない。そんな話を書きました。
【2】【237】ふっくらアドふとん(15/10/5)
多数の応募者から三万人だけ、このふっくらアドふとんを手にすることができる。
私はその幸運な当選者だ。
「ふっくらアドふとん」という名前の、寝心地が素晴らしいと評判のふとんを手に入れた主人公。早速寝てみると噂どおりの快適な寝心地と良い目覚め。なんだか妙に元気に前向きになってきたぞ……と、改善した睡眠により変化していく生活。それは本当に自分の意思? お気に入りの掌編。広告の刷り込みでも、自分で選んだと思えるなら気持ちよく影響されていけるかも……?
【3】【220】赤い糸が見える女は結婚できない
(08/7/17)
赤い糸が見えるわたしは、結婚が出来ないままもう三十も半ばになってしまいました。
中学生のころに赤い糸がはじめて見えるようになって、そのヒミツは誰にも言わずに
わたしの胸だけにしまってあるのです。
珍しくがっつり恋愛もの(がっつり……?)。赤い糸って本当にあったし目に見えた。その場合どうなるのか? 導かれて幸せになれるのか? 結構ストレートに書いてしまった、お気に入りの作です。
【4】【199】ズス虫(07/2/8)
――「ズス虫あげます」
家の近所のペットショップの入り口に張られた紙をみて、僕は噴き出した。
秋の気配が近づいた、残暑の和らぐ季節で、あきらかに「スズムシ」と書きたかったことがわかるその張り紙に、
目が釘付けになってしまった。
お気に入りの一篇。街で偶然見つけた「ズス虫」という聞きなれない・見慣れない文字列に興味をそそられ、からかうつもりだった主人公は「ズス虫」に夢中になってしまい……
創作裏話ですが、実際に私が当時住んでいた家の近くのペットショップに「ズス虫」という貼り紙が貼られていたのが元ネタです。
【5】【115】成虫(02/7/27)
「すごい飛翔筋だ」
ジムの先生がそうつぶやいた。「広背筋じゃないんですか?」僕が不思議に思ってそう聞いたが、先生はじっとバグやんの背中を見つめているだけだった。
「いや……飛翔筋だろう。よく見なさい」
先生に言われるまま、そこにいた全員が先生に指差されているバグやんの背中に注目した。翅が生えてきている。
蛹から成虫になるということはどういうことなのか、少し考えてみて「成虫になってしまって羽根がはえた青年」の話を書きました。セミの鳴き声が聞こえて、セミのことを考えるといつも「生きるとは何か?」に思いをはせてしまう。
【6】【67】いぬころと一緒に(00/10/11)
ソレは、青年を見るとしっぽを振りました。 「ヤンヤン!」 鳴き声でしょうか。青年は少しの間ビックリして見つめていましたが、 あまりに憎めない顔(?)をしているので思わず抱き上げました。 「おうおう…むっちゃ、カワエエな、自分。 どうや、おれんち来るか?」 青年がソレに話しかけると、ソレは嬉しそうに しっぽを振りながら鳴きました。「ヤン、ヤン!」
なんか引用の上に囲み記事になっちゃったな。
「イヌコロ」と名付けられる、銀色のなぞの生き物を拾った青年とイヌコロの話です。だいたいわたしの作品は、いい関係になるとしんでしまいます。最近はそうでもないけど昔の作品はしぬはなしばっかりです。そこも気に入っているのですが……
【7】【121】ポストの中にコビト(02/11/5)
ある日、僕が仕事から帰ってくると、僕のポストから光が漏れていた。
あれ、昨日消すのを忘れちゃったのかな。とりあえず中を覗いてみると、ポストの中のイスに小さな人形がいた。
模型なんかおいた覚えはない。
僕が不思議に思って、人形をつまむと、そいつは人形よりぐにゃっとやわらかく、しかもバタバタと暴れだしたのだ!
「はなしてくれ!はなしてくれ!」
人形が騒ぐので、僕はそっと手をはなした。これは人形じゃない、コビトだ。
ポストの中にたわむれに部屋を作ってみたら、そこにめっちゃちいさいコビトが住んじゃった。という話。お気に入り。ひとはしなない。
ひとがしななくて、急にやってくる奇妙な存在とか状況に振り回される普通の人っていう話がとても好きで、自分でもいくつも書いている。あんまり慌てず、ひょうひょうとその状況を受け入れるのはやっぱ藤子F先生や藤子A先生の短編に影響されてるんだろうなあと思う。
【8】【141】3ケなしタバコ(04/2/14)
「素晴らしい!」
僕は指を鳴らしました。
「いままで、『ケイザイの負担』『ケンコウの被害』『ケンエンカ』の3ケに悩んでいたけど、
このタバコならその全てを気にする必要がなくなるわけだ!ありがとう、あんた神様だ」
僕が喜ぶ姿を見て、老人は何度もうなずき、次第にその存在を薄くして、消えていきました。
不思議な体験は終わり、僕の手には素晴らしい「3ケなしタバコ」が残されたわけです。
これも「ポストの中にコビト」に近い、いいものを手に入れた男の話。「タバコの良くないとされる部分を排除した夢のようなアイテム」。そういえば私の作品は何気に男が主人公のものが多い。描く絵は女性スタイルが多いのに(性別が女とは限らない)
【9】【174】otaku(05/7/29)
otakuの知識は本当に無駄なものばかりで、彼らがしっている知識を彼らが思い出すよりも早く、
若者はコンピュータからはじき出してしまいます。
どんな難題もコンピュータには必ず答えが入っているものなのです。毎日の料理も、家事も、移動も、なにもかも
コンピュータ任せが普通です。
生活に必要ない知識を持っている人のことを「otaku」とよび、コンピュータから検索する能力が珍重される世の中だったが、ある日コンピュータが人間たちの手元からなくなってしまった。知識は本当に「個人の中にいらないもの」だったのか?otakuは無駄だったのか? という話で、何かというと自分で引っ張り出してきてひとに見せる頻度が高いお話。お気に入り。見てね。主人公はotakuをバカにしていたけど……?
【10】【163】冬眠の鯉(04/12/12)
「結局、クラムボンってなんだったんでしょうね?」
「わからないな」
「鯉になってから、クラムボンに会いましたか?」
「さぁな、会ったかもしれないし、会ってないかもしれない」
最後、10本目。最初の4本ぐらいまでは「これ10本も選ぶの大変だなあ」と思っていたのに、だんだんノッてきて「まだ紹介したいのあるのになー」という気持ちになっている。うーん。とりあえず最後は「冬眠の鯉」。物語のたのしさを知っている鯉たちの冬の様子で、私はこの風景を書けたことが大変良かったと思っている。鯉たちは冬の間水底でじっとして、物語を楽しんでいるのだ。
他の作品もぜひ読んで欲しい!
「ブラックドウワ」
新作もお楽しみに! 明日も更新するのでぜひ次もみてみてね。