とあるアカウントの消滅について

 

これは Fediverse Advent Calendar 2020 の14日目の記事です。(2020/12/14)


とあるアカウントの消滅について話そうと思う

2020年11月、私は動揺した。

とある人が「このアカウントの運用をやめて、すべての活動を停止して消滅することに決めた」とTwitterにて告知しているのを見つけてしまったその日から、消えるまで、消えてからも、私の中の「なんで?」がとまらない。

その「アカウント氏」がどういう人だったか、どうかかわってきたかについての詳細は個人的な話になりすぎるので、さらっと説明することにする。

(「アカウント」という言葉もちょっと違う気がするけど、「ユーザー」というのもなんか違う気がするので、ネット上に存在した彼の多くのプラットフォームにわたる活動をひっくるめてこの記事では「アカウント」と呼ぶことにする)

10年以上見続けたアカウントだった

その人はニコニコ動画でゲーム実況動画を中心に活動する動画配信者だった。2009年にその動画を見つけてから、人柄が気に入ってよく見ていた。その後ニコニコから撤退し、動画を消してもUstreamで再開したり、Twitterとツイキャスなどを始めたりしたのを見つけては「彼のアカウント」をフォローし続けた。彼があたらしい動画のプラットフォームを利用し始めればそこをブックマークして定期的にチェックしていた。

ニコニコ動画に投稿された数百本の動画やユーザーアカウント自体を消したときはあまりにあっさりしすぎていて、
「消しますねー」と言った通りのスケジュールで本当に消えており、私はその時も動揺した。
彼は自分のアカウントをサッと消してしまえる、身軽な人なのだ。

2020年、活動をやめてしまった

2019年に彼はyoutubeライブも始めて、リアルタイムでコメントのやり取りができる配信にたまにお邪魔したり録画を見たりと「(視聴者の私としては)すげー充実してるな」という1年になった。毎週のように定期配信も行われ、活発になって定着したように感じていたある日「ちょっと休みます」との告知。 しんどいのかな? 確かに元気なくてしょんぼりした感じがあったしな、いいよ~好きなだけ休んで、また帰ってきてね。そんな感じで軽く思っていたし、たまにTwitterに戻ってきたら「いいね」を押したりしていたのに……

それは突然だった。

最初の告知には気づかず、2度目の告知で「決めた最終日をもってTwitterのアカウントも消して、youtubeも消して、この名前での活動を一切やめて消滅する」と書かれていることにきづき、激しく動揺した。

え、なんで、やめないでほしい

それは衝撃的で、ぐるぐるぐるぐる、突然告知された別れをなんとか回避できないか毎日毎日考え続けた。でもこれまで10年以上見てきたのでわかる、彼は言ったことを撤回しない人だ。

この「アカウント消滅」は「わたし」のせいなんじゃないか? できることがあったんじゃないか? ぜんぜん支えられていない。なんにもしてこなかった。10年以上にわたって、何かの見返りより発信の楽しみを優先しているように見えた彼のコンテンツを受け取るだけ受け取って、わたしは何もしていないから「やめるね」と言われたら引き留めるすべもない、ただそこにふわふわ浮いていてくれた姿が今後見えなくなってしまうことを止めることもできないのだ、「わたし」には。 ぐるぐるぐるぐるした。

ひとつのアカウントが消滅するとはどういうことなのか

最終ライブ配信で彼は言っていた、「このアカウントは消えて活動はしなくなるけど、俺自身がしぬわけじゃないんやで」と。

その通りだし、それはずっとずっと私の「ぐるぐる」した期間でも何度も考えていた。
思い出だって消えない。

ただ、アカウントと、そこに投稿されていた日々、データ、コンテンツ、やり取りはぜんぶ消える。オフラインの活動は一切ない。もちろん今後の更新もない。彼のその後を伝えてくれる第三者も存在しない。
ひとつのアカウントの内容が消えるのではなく、そのアカウントに紐づいた彼のアカウントとしての人格が消滅するように私には思えて、それは……ある意味…… だめだ、はっきり書けないけど、一番大きい別れに匹敵するように感じてしまうのだ。

お別れと、最終ライブはとてもいいものだったとおもう。そこにあつまったみんながみんな、ちゃんとお礼と寂しさと「いつでももどってきていーのよ」を伝えることができたと思うし、いっぱい引き留めて考え直すように説得しつつも思い出話もできたし、なかなかこんなお別れはないだろう。これも彼の人柄あってのことで、自然消滅と違うところでもあった。

「ひとはいつ死ぬかわからんし、だんだんみんながいなくなっていって、あの人いなくなったな、誰もいなくなったなと思いながらなんとなくお別れも言えずに終わるのは嫌やった」

というようなことを彼は言っていた。 やっぱりちょっと今年のこの状況の影響があるのかもしれない。つらい。10年以上だよ。長い期間、続けてきたことを終わらせる、もうやらないって決めるのは大変なことなのに、彼は今までと同じであっさり自分を私たちの前から消滅してみせる。

 

そして予定どおりに彼のアカウントは消えた。

 

Fediverseで分散するということ

無理やりだけどFediverseと絡めていこうと思う。

私は「マストドン」にいくつもアカウントを持っている。それぞれフォローしてくれてる人もフォローしてる人も違うから、「最近 Achi をみかけないなあ」と思ってる人もいるかもしれない。

マストドンでも、サーバごと消えたり、引退宣言をする人がいたり、どこかのサーバへ移行して元のアカウントを凍結したりということは日常的にある。サーバが無くなっても、引っ越し機能を使って新しいサーバに移動する人は結構いるし、管理人さんもどこかのサーバに身を寄せてマストドン自体は続けていたり、Twitterなどにほかのアカウントがあったりともともとアカウントを分散させている人が多いように感じる。

私は基本的に、作ったアカウントは消さずに来た。

根っからの「アーカイブ人間」だ。持ち物は少ないほうが身軽だが、私は身軽さを犠牲にしても「できる限り持って行く・取っておく」を選ぼうと、だいぶ前にきめたから。管理しきれずに、存在を忘れたとしても、私は消さずに「取っておく」。

そもそもこのサイト「Blackstrawberry」がもう23年以上になるのだ。

わたしにできるたったひとつのこと

誰かがいなくなるのなら、わたしにできることはたったひとつだけ、

「わたしはここにいる」を続けること。

そこにいなくなってもここにはいます。どこかにはいます。

あなたがいなくなることを止めることはできないけど、会いたいと思ってくれたなら、わたしはいつでもここにいます。

これは「消えてしまったアカウント」の最後にあわせて描いた絵です。

わたしはここにいます。目印をいつでも置いておきますから、思い出したらここへ来てください。

 


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【自作の宣伝】

mstdn.jpへの投稿で連載している、ハトを題材にした掌編50本を電子書籍にまとめています。
2020年に2冊目も発行しました。
【ブックウォーカー】https://bookwalker.jp/de19f5a798-63bb-4dd2-a105-fbe03328db43/
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(現在もJPなどでたまに継続中)

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