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サンタにおねがい

「今日はみんなにうれしいおしらせがありますよ!」
明るい女の先生の声が四年二組の教室に響きました。
「なんと、今日はクリスマスなので、サンタさんが教室に来てくれています。
みんなのお願い事を、何でもひとつ叶えてくださるそうですよ!」

 わーっ、と子ども達から歓声があがりました。
みんなが手を叩いて喜びます。
その喜びの声に、サンタさんはしずかに手を振って、にこやかに答えました。

「それでは、一人ずつサンタさんにお願い事をしましょう。」
先生がクラスのみんなをきちんとならばせました。
出席番号順にならんだ子ども達は、ドキドキする胸を押さえるようなしぐさをしながら
サンタさんをみつめていました。

「先生も、どうぞ」
サンタさんに突然いわれて、先生はビックリした様子です。
「私もいいんですか!」
先生は少し考えてから、
「見た目がぱっとしないから、ふたえまぶたになりたいなぁ、なんて」
と小さな声でつぶやきました。
サンタさんが袋から手をだして、先生の顔をなでると、一瞬で先生の目はふたえまぶたに変わりました。
先生は喜んで、鏡をみながらピョンピョンはねています。

子ども達も順番に、欲しいおもちゃをねだったり、逆上がりが出来るようにしてもらったり、
かわいい服やぬいぐるみをもらったりしていました。

わたなべくんは順番が一番最後ですが、その間ずっと目を閉じて考えていました。
(みんな、子どもっぽいな。先生ですらアレだ。ぼくはもっと、ぼくのスゴイ願い事を叶えてやるんだ)
わたなべくんは誰よりも大人っぽく、本もたくさん読み勉強のできる子です。

(金なんてもらったって良いことは無いだろう。身長を高くしてもらったって、ただそれだけだ。
みてくれの優位はいらないし、頭は勉強することでいくらも良くなるだろう。
特殊な能力なんかはどうだろう。就職に有利なヤツもいいだろうけど、
小学生で経験の浅いぼくが考え付くくらいのことが役に立つとは思えない。
いっそファンタジーな能力はどうか……空を飛べるとか? いや、単に空を飛べるだけではダメだ、
スピードやコントロールも重要だ、力ばかり強くしてもらっても普段制御が利くようなルールがなければもてあましてしまうだろう)

「わたなべくん、君で最後ですよ」
先生がふたえまぶたをパチパチさせながら、わたなべくんの肩に手を触れました。
サンタさんはニコニコしています。
わたなべくんは自分の番がきていることに気がつかないほど考え込んでいました。
そして目を閉じたまま、

「願い事が具体的に思い浮かぶようになりたいなー」
ポツリとつぶやいたのを聞いて、サンタさんは袋から手を出すと、わたなべくんの頭の上をサッと滑らせました。

その瞬間からわたなべくんの頭の中には、具体的な願望がどんどんわいてくるようになりました。

こうして今年もサンタさんは、たくさんの子ども達の夢をかなえ続けているのです。

end

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(c)AchiFujimura StudioBerry 2005/12/14


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